毎年、日本で行われている野外ロックフェスティバル。オールナイトで満喫して、朝焼けを眺めながら非日常感に浸るスケジュールがすでに入っている、という方もいらっしゃるだろう。さて、このロックフェスティバルであるが、歴史を辿っていくと1969年にアメリカで開催された大規模で伝説的な野外ライブ「ウッドストック・フェスティバル」の名が出てくる。入場者は40万人を超え、そこでは既成の価値観から抜け出した若者達が熱狂の渦を巻き起こしていた。
自然と平和と自由を愛する者たちが集まっている祭典のシーン。ここで何かが始まろうとしていた。
今回は、このようなロックにまつわる出来事や、ロックのスタイルの一つであるヘヴィメタルが題材となっているサイコホラーアドベンチャーフリーゲーム『Steel howling』を紹介していきたい。本作は、ニコニコ動画のゲーム投稿サービス「RPGアツマール」の投稿作品でもある。全編手描きのマップが大きな特徴で、アートの中に直接入り込める展覧会のようなゲームとなっている。
目が覚めると、そこは殺人鬼の家だった
鍋の中で何かが煮える音がする中、見知らぬ場所で目覚めた男。周りには、拘束されて身動きが取れない二人。三人は、いつの間にか殺人鬼の家に閉じ込められていた。物語はこの三人を中心に進んでいく。
目覚めた男の名はジョナサン。縛られたロープが甘く、自由に動けるようになる。長髪とヒゲが目立ち、3人の中では最年長となる。頼りがいがありそうに見えるがとても傷つきやすく、繊細なハートを持つ人物である。
拘束されているうちの一人、不良少年のジューダス。野球帽を愛用している。ジョナサンとは対照的な性格の持ち主で、たびたび互いに衝突するようになる。
赤ずきんを被った冷静沈着な少女。精神安定剤のように、荒っぽい男達の間に入って場を落ち着かせていく。
手描きマップの美しい世界
ゲームを開始すると、目に飛び込んでくるのは立体感や奥行きのある手描きの2Dマップである。漫画に出てくるようなイラストの中を自由に歩くことができるのだ。
本作はRPGツクールMVで制作されているが、RPGツクールMVの機能として「歩行できる一枚絵のマップ」を実現しやすくなったということが特徴の一つになっている。これにより、マス目に捉われない外観のマップが作り出されている。
キャラクターは一定の歩幅で歩いていくが、本作のイラストマップはその歩幅(マス)に合わせて家具や壁などが描かれており、キャラクターがマップの上に乗ったときに不自然にならないように気を配られている。
さて、「絵」の他にもう一つ飛び込んでくるものがある。それが「音」である。
鍋の中で何かがグツグツと音を立てながら煮えている場面から物語が始まっていくが、鍋の中に入っているものはとても“サイコ”ホラーなものであるため、ここではお伝えすることができない。一つ言えるのは、細かく描かれた一枚絵と同じように、サイコホラーな絵もリアルであり恐ろしい光景だということだ。
そしてなんと、制作者のオリジナル楽曲が10曲以上も入っている。こだわりが感じられる効果音も含め、そういった音にも注目してほしい。音楽をテーマとして扱っている本作にはこの「音」が欠かせないのだ。
物語に登場する『黒い安息日』は、ロックバンド「ブラック・サバス」のヘヴィメタルなデビューアルバムが元ネタとなっている。本作ではあちこちにロックやメタルに関する用語が現れるが、条件を満たすと用語解説のおまけを見ることができる。お楽しみの一つだ。
ゲームを進めていくと三人は殺人鬼のいる家から脱出することになる。しかし、悪夢は終わっていなかった。気が付けば再びあの家に戻されていて、そこからが本当の悪夢の始まりであった。
一体どうなっているのか?そして「ヘヴィメタル」がどのように関わってくるのか?真相はぜひあなたの目で確かめてほしい。音楽に注がれた人々の果てしなき情熱が感じられるだろう。
[基本情報]
タイトル:Steel Howling
制作者:Achamoth
プレイ時間:1プレイ40分程度、真相が明かされるまで2時間半程度
動作環境:Windows,Mac
価格:無料
ダウンロードやブラウザ版でのプレイはこちらから
http://www.freem.ne.jp/win/game/13658