今回取り上げるフリーゲームは、サークル「クーネリア」が制作したRPG『芥花』です。繊細で可愛らしい少女達が主役の作品ですが、その題材は「拷問」と「秘密」。「至死者」と呼ばれる少女達が悪魔主催のゲームに参加させられ、お互いの「死因」を奪い合うという内容です。彼女達はそれぞれが拷問の悪魔と契約し、「辺獄」を舞台に戦うことになります。
拷問と言うとただ理不尽で恐ろしい印象を持つ方もいると思います。しかし『芥花』では直接的な描写は控えめなので、苦手な方にも間口が広い作品です。一方、プレイヤーに揺さぶりをかけるような生死への葛藤を描くことで、少女達が生きた証を鮮烈に表現しています。
キャラクターだけでなく、駆け引きが熱い戦闘や、まったく違う遊び方を提示した3つのシナリオなど、本作は様々な要素が絡み合って構成されています。この記事ではその魅力をじっくりと紹介します。
死を運命づけられた少女達は、悪魔主催のゲームに挑む
本作の主人公は普通の中学生の少女「黒浦芥花」。彼女は自分が死ぬ光景を目にし、気がつくと見知らぬ教会にいました。そこには同じく自身の死の光景を見た6人の少女がおり、戸惑う彼女達の前に「ルイゼット」と名乗る悪魔が現れます。
ルイゼットが告げたのは、芥花達は1年以内に死ぬ定めが決まった「至死者」であること、そして死の記憶を現世に持ち帰るためのゲームに参加させられることでした。
芥花は何も分からぬまま突然ゲームに参加させられる。
ゲームの内容は、契約した「拷問の悪魔」の力を使って戦い、他のゲーム参加者から“死因”を2つ以上奪うというもの。目的を達成してゴールできた場合、自分の死を回避できる可能性を得ますが、負けた場合はすべてを忘れて、現世で逃れようのない死が待ち受けています。
しかし死因を得るためには、ふたりの少女と拷問の魔法を用いて戦わなければいけません。戦いに積極的な者、消極的な者がいる中で、芥花は自分で未来を決めることになります。
相手を責め立て屈服させる「拷問バトル」
本作の戦闘は「拷問バトル」と呼ばれ、芥花はパートナーの悪魔「“串刺し”イングニド」の力を使っていきます。敵味方には「意思」が用意されていて、これを0にして相手を屈服させると拷問成功です。
一方相手には「BP」と呼ばれる生命力に値するものも用意されており、相手を屈服させる前に0にすると殺害してしまいます。いかに殺さずに相手を屈服させるかの駆け引きが非常に重要です。
芥花のパートナーのイングリド。高慢だが、戦いでは頼りになる存在だ。
戦闘コマンドには「心理」「拷問」「処刑」があり、精神的に責めるか肉体的に責めるか、状況に応じて使い分ける必要があります。それぞれのスキルの威力や効果に影響を与えるのは「傾向」と呼ばれる精神の状態で、戦いの中で増減します。
辺獄に住む罪人との戦い。必須な戦いは少ないが、勝利すればアイテムが手に入る。
「致死者」同士の戦いでは、相手も悪魔の拷問の力を使ってきます。「焚刑」「圧迫刑」「緊縛」など、それぞれ特徴的な能力を使って芥花を苦しめます。強敵に打ち勝つには、BP、傾向、相手の行動パターンを読み、状況に応じた戦術を組み立てることが秘訣です。
悪魔のひとり、「“動物刑”のアニェーラ」。使い魔を連れて戦うため、罪人とは比べ物にならない強さだ。
辺獄で繰り広げられる、3つのシナリオ
本作は3つのシナリオが用意され、初回は物語に沿って進行する「ユウアイ篇」、そのクリア後に選べる「ビョウドウ篇」「ジユウ篇」に分かれています。レベルは存在せず、イベント戦以外は無理に戦う必要のないシンボルエンカウント式なので、最後までテンポよくプレイすることが出来ます。各シナリオのプレイ時間は2~3時間ほどです。
ユウアイ篇
「ユウアイ篇」では、ゲームに巻き込まれた少女達が葛藤しながら戦っていく物語が描かれます。ゲーム参加に消極的な「あやめ」「セイラ」「おこな」のグループに合流した芥花は、彼女達と共に、「辺獄アブラクサス」の奥地へと足を踏み入れます。
争うことなく道を切り開こうとするセイラ達。それぞれが胸のうちに秘めるものは何か。
一見可憐な致死者の少女達ですが、それぞれが人に言えない“秘密”を抱えています。故に彼女達はもろく、同時に激しい一面を見せることもあります。それぞれの想いが交錯した結果、物語は大きく揺れ動き、ゲームの結末へとなだれ込みます。
辺獄を進むに連れ、少女達の歯車が少しずつ狂い始める。
そういった秘密を暴くことも本作の魅力のひとつ。致死者同士の戦いで死因を奪えば、それぞれが死に際に見た光景を垣間見ることが出来ます。死の絶望の先に何を見たのか、それを紐解くことで、少女達が何のために戦うか知る手がかりになるでしょう。
死の間際の記憶。ゲームで敗北すれば、残酷な未来が待っている。
少女達の熾烈なぶつかり合いが描かれる本シナリオでは、芥花の選択や戦闘の結果次第で物語が分岐し、戦う相手が変わります。少女達がどういった結末を迎えるのか、どうして死ぬことになったのか、プレイヤー自身が見届けて下さい。
ビョウドウ篇
「ビョウドウ篇」ではうってかわって、戦闘なしの推理ミステリーです。「百客館」に辿り着いた7人の少女達は、魔力を奪う雨で能力を制限される状況に置かれてしまい、一時休戦します。百客館はかつて地獄を恐怖に陥れた、いわくつきの場所。現在は主人不在で、使用人達だけが働いていました。
使用人達は何故か異様に“蜘蛛”を恐れている。
そんな中、致死者のひとりが突然殺害されます。犯人が誰か分からない状況下で、使用人達は主人である「ムカデ姫」が帰ってきたのではないかと噂します。ムカデ姫が彼女を殺したのか、それとも別の犯人がいるのか。魔の手が迫りくるの中で、芥花とイングリドの犯人探しが始まります。
探索パートでは館の中を調べることが出来る。館に隠された秘密とは…?
ビョウドウ篇では「ペネトレーター」が開放され、プレイヤーが推理するための情報を確認することが出来ます。百客館の探索で事件の鍵を探し、犯人はどうやって致死者を殺害したか考察し、事件を解決に導いて下さい。
魔法が存在するとは言え、厳密なルールがある。情報を整理しつつ、真実を導き出そう。
ジユウ篇
「ジユウ篇」は他のシナリオと違い、プレイヤーが自由に進行ルート決めることが出来る「フリーシナリオ」式のゲームです。「笑わざる子午線」と呼ばれる場所からいくつものダンジョンが繋がっており、各地には致死者の少女達が待ち受けています。彼女達とどんな順で何人と戦うかの采配は、プレイヤーの手にかかっています。
辺獄には多種多様なダンジョンが存在する。ソルトロードもそのひとつ。
各地をじっくり探索すると致死者の意外な側面を知る事も出来、ユウアイ篇・ジユウ篇では謎だった部分を解き明かせるかもしれません。ただしユウアイ篇と比べて、どの致死者も大幅に強くなっているので一筋縄ではいかないでしょう。致死者との戦い以外にも、地獄に住まう罪人の依頼を受けたりと様々なイベントが用意されています。
「“水責め”のヴァルトルーデ」戦。ジユウ篇での悪魔達は圧倒的な強さを誇る。
儚き願いを胸に、あなたはゴールを目指す
少女達の生死を賭けた戦い、本当なら見てはいけないものを見る背徳感、妖艶なグラフィックとBGMによって、『芥花』は他のRPGとは一線を画したゲーム体験を与えてくれます。もし少しでも良さそうと思ったなら、例えこういった世界観に慣れていなくてもオススメ出来ます。死の運命の中でもがき、生を求め駆け抜けた、少女達の物語を少しだけ覗いてみませんか?
タイトル 『芥花』
制作者 クーネリア(制作者様サイトはこちら)
対応OS Windows XP/Vista/7/8/10
プレイ時間 1シナリオ2~3時間程
価格 無料
ダウンロードはこちらから
http://www.freem.ne.jp/win/game/13168