※本記事は、1月7日より開始した「SMILE GAME BUILDER」制作実演の連載です。
フリーゲーム作者による「SMILE GAME BUILDER」制作実演連載が開始 完成作はダウンロードして遊べる!
Qpic『スーパーフックガール外伝』 制作連載 1/ 2 / 3 / 完成作品ダウンロード
こんにちは、「SMILE GAME BUILDER」制作実演連載・第二回を担当するカナヲと申します。
2013年よりゲーム制作サークル『てりやきトマト』の代表として、数々のフリーゲームを制作してきました。シナリオ、グラフィック、作曲と、必要に応じてひととおりの制作をすべて個人で担当しています。また近年はEntyを中心とした同人活動のほか、フリーランスのクリエイターとして活動しており、『心霊写真使い涙歌』『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』など、企業との関わりのあるプロジェクトにも参加しています。
カナヲ氏の代表作の1つ『虚白ノ夢』(紹介記事:フリーホラーゲーム『虚白ノ夢』。運命に囚われた少女の物語と、巧みな恐怖演出が味わえる)
代表作は、RPG『はじめての宿屋さん』『積層グレイブローバー』や、探索ホラーADV『虚白ノ夢』など(こちらは小説版も発売中です)。現在はダークファンタジー『被虐のノエル』を連載中。今後とも特定のジャンルにこだわらず、幅広いコンテンツを手がけていきたいです。
制作するゲームは、3D探索ホラーADV『虚毒ノ夢』!
今作は、2015年公開の探索ホラーADV『虚白ノ夢』と世界観を共有し、そこから数年がたった後の世界が舞台の番外編『虚毒ノ夢』です。ただし登場人物のほとんどが新規キャラで、物語の理解に前作の知識が求められることもほとんどないので、前作に触れていなくても今作単体で楽しめるようになっています。
ではどこに『虚白ノ夢』シリーズたる要素があるか、などの話はまた別の機会に語るとして、ここでは今作のキモになるゲームシステムについてご紹介したいと思います。
主人公の未散(ミチル)は記憶障害を抱えており、眠るとその日あったことをすべて忘れてしまいます。そのため、毎日『記憶ノート』に今日の出来事を記し、それを次の日の自分に伝えているのです。リハビリをしながら日々を細々と生きていくミチルを支えているのは、3LDKのマンションに同居している優しい兄ただ一人。
そんなミチルですが、ある日『記憶ノート』の一部に不自然な黒塗りを見つけます。まるで書いてあったなにかを封印するかのような黒塗りの下になにが書かれていたのか、そもそもそれは過去の自分が塗りつぶしたのか、それとも……? 兄に『保護』され、外出すらできない3LDKの我が家を舞台に、ミチルは兄の目を盗んで隠された記憶の手がかりを探していきます。
今作では、SMILE GAME BUILDERならではの機能のひとつである『主観視点』を最大限に活かし、
・目の前しか見えない限られた視野の中で、
・同じ3LDKの部屋のどこかにいる兄に気取られないよう背中を気にしながら、
・まるで監禁犯の目を盗んで外に助けを求めるかのごとく、部屋を調べていく
といった要素をゲームのメイン要素にしています。
今テレビをつけたら、音で隣の部屋にいる兄にバレないか? 兄がシャワーを浴びている間にこそ調べられる場所はないか? 余計なことをしているのがバレれば兄は静かに背後から忍び寄り、そこで今日のミチルは終わり、なにも覚えていない明日のミチルが目覚めるだけでしょう。
これ、けっこうドキドキします。いつの間にか音もなく後ろに人が立ってるのってかなりホラーですね。僕もホラーは苦手です。
3Dホラーゲーム「ならでは」のポイントとは?
今作はとにかく「SMILE GAME BUILDERにしかできないことをしよう」という一点に尽きました。
従来のRPGツクールなどのゲーム制作ツールとの最大の違いは3Dの世界を簡単に作れることだったので、「3Dのマップで」なおかつ先ほども記した「主観視点で」一番映えるゲームを考えたところ、それは目の前と背中を気にして緊張しながら遊ぶホラーゲームなんじゃないかと思い至ったというわけです。それらの要素を最大限活かすため、目の前と背中を気にして緊張しながら遊ぶことに関係ない要素はすべて削り、シンプルな内容を目指しています。
ただし、3Dならではの欠点も忘れてはいけません。主観視点で遊ぶならとくに、3Dは細かく素早い移動操作を苦手とします。例えば、2Dのホラーゲームでは定番となった「追いかけられイベント」は移動の負担を大きくするので、今回は避けることにしました。「広いマップ」も、ゲーム画面が主観視点で固定だとマップを覚えるのに苦労しそうです。となれば、今作は「アクション要素がなく、狭いマップを行き来する」ゲームになりそうですね。
作りたいゲームの雑感が決まれば、あとはそれをより魅力的にするフレーバー、すなわち物語を肉付けするだけです。僕の場合は、ゲームの構造に『虚白ノ夢』に似た構造を感じたので、いい機会だと思い、以前から薄々考えていた続編的なアイデアをアレンジして活かそうという形になりました。
次回の記事ではより具体的なシーンや物語の登場人物についても触れつつ、SMILE GAME BUILDERの使用感などについても書きたいと思っています。どうぞ引き続き『虚毒ノ夢』にご注目ください!
※本連載で制作しているゲームは完成後、作品を遊べるようにダウンロード形式で公開することに加え、SMILE GAME BUILDERを持っている人向けに、ゲームの実装の中身を見ることができるプロジェクトファイルも合わせて公開する予定です。