マップ探索などの要素を削ぎ落とし戦闘にフォーカスした「ノンフィールドRPG」と、ランダムに入手したアイテムを駆使して状況を切り抜けていく「ローグライクRPG」。この二つのジャンルには親和性もあり、『ロードライト・フェイス』(紹介記事)やその続編である『グレナサクリファイス』(関連記事)、『箱舟のノワール』(紹介記事)など、「ノンフィールドローグライク」と呼べるようなRPGが生まれ続けている。
今回紹介するフリーゲーム『アムネジアヒーロー』も、そんなノンフィールドローグライクRPGの一つ。レベルアップ時に入手できるポイントを使って、スキルの習得に加えて防御やクリティカル、移動中のさまざまな操作など「このゲームでできること」自体を増やしていけるのが特徴の作品だ。
「能力の復元」によりゲームシステムのロックを解放
ゲームは全5ステージ構成で、各ステージでは前進し続けながら敵との戦闘や探索ポイントでの探索といったランダムに発生するイベントをこなし、最後に待ち受けるボスを倒すことでステージクリアとなる。戦闘は1vs1のコマンド選択型で、敵の能力値や次の行動、先攻・後攻が画面に表示される。オープンな情報をもとに、敵のさまざまな攻撃をどう凌ぐか、あるいは先に倒しきるかなどと戦術判断を下していくのが面白い。
探索や戦闘を繰り返しながらステージを攻略していく
プレイヤーキャラクターの能力値は与ダメージに影響するATK、被ダメージ軽減に影響するDEF、スキルやアイテムの効果量、クリティカル率等に影響するTEC、先制行動率や状態異常の耐性、回避率等に影響するSPDの4種類。レベルアップ時のボーナスで任意に上げられたり、装備品の効果で増減する。そしてレベルアップ時には「GP」と呼ばれるポイントも入手可能で、これによる「能力の復元」が本作の要となっている。
本作の主人公は記憶喪失という設定で、忘れている能力を思い出していくという形になる。そのためか、復元(習得)する内容は戦闘スキルに留まらず、防御コマンドやクリティカル・回避、攻撃時の与ダメージ表示など、システム面まで含めた「戦い方そのもの」にも及ぶ。いくらTECやSPDを上げても、能力を復元してシステムのロックを解除していかなければクリティカルも回避も発動しないのだ。
RPGにおける基本的なコマンドと言える「防御」も、能力を復元して初めて使用可能になる
また、探索ポイントでの探索可能回数が増えるなど、移動中に効果を発動する能力もさまざまなものが用意されている。1回のプレイですべての能力を復元するのは難しく、プレイスタイルや成長方針に応じて復元する能力やその優先順位を選定していくが本作の醍醐味。たとえばSPDを上げないプレイなら、発動にあまり期待できない回避は敢えて捨ててGPを他に割り振る、といった選択もアリなわけだ。
復元した能力とのシナジーも発生するユニークな装備品やアイテム
能力の復元と並び、プレイに大きな影響を与えるのがランダムに入手できる装備品やアイテム。装備品は武器と防具を1種類ずつ装備可能で、能力値が増減するほかに「攻撃を受けた際に被ダメージ量に応じて敵にもダメージを与える」など、さまざまな特殊効果を備えたものが登場する。
さまざまな特殊効果を持つ装備品を使いこなすのも醍醐味。装備画面では能力値によって算出されるクリティカル率等の各種数値も確認できる
アイテムは回復アイテムなどの消費物に加え、持っているだけで効果を発揮するパッシブスキル的なアイテムも存在し、複数持つことで効果が累積するものも。とはいえその分アイテムの所持枠を圧迫するのがトレードオフ要素だ。装備品の特殊効果やパッシブスキル的なアイテムには復元した能力の効果を上げるようなものもあり、このシナジーも装備選びやアイテム管理の戦略性を高めている。
装備品やアイテムは、探索時にランダムに遭遇する商人から購入したり、逆に商人に売却することも可能。この際の対価である「AP」は、戦闘スキルの使用でも消費するポイントとなっている。買い物とスキルで共通のポイントを使うため、リソース管理の要素も強い作品だ。
戦闘スキルは相手のDEFを無視する攻撃や各種状態異常を付与する攻撃など、使いこなせば強いものが揃っている。リソースが買い物と共有なのが悩ましくも面白いところだ
ステージ分岐やクリアに必須ではない強敵も。やり応え抜群の一作
本作をノンフィールドローグライクRPGの先行作品と比較した場合、クラス(職業)やキャラクターの選択といった、プレイ開始時点での能力傾向を差別化する要素がないことは特筆点と言えるだろう。「全クラス、全キャラでのクリアを目指す」といったやり込みの指針が存在しないのでリプレイ性はやや下がるが、その分毎回完全に1からキャラクターをビルドしていく楽しさがある。筆者の場合は「序盤に引けた良い装備品を活かす形で成長方針や復元する能力を決める」というプレイをしてみたが、毎回思わぬプレイになってなかなか面白い。
リプレイ性の面では、全5ステージのうち2~4ステージは2種類から選択するようになっているのもポイント。進行のバリエーションを楽しめるほか、「今回はSPD重視のステ振りや装備品で状態異常への耐性を上げているので、状態異常を仕掛けてくる敵が多いステージを選ぶ」といった戦略性にも繋がっている。
2ステージ目から4ステージ目までは2種類のステージから行き先を選択可能。それぞれ傾向の異なるユニークな敵が出現する
また、各ステージには制限ターンがあり、これを超えると「EXエネミー」が出現、プレイヤーを追い掛けてくる。ステージのボスより手強い相手なので戦闘や各種イベントでターン数をかけすぎずに逃げ切るのが無難なのだが、敢えて倒すことでレアなアイテムや装備品を入手することも可能。一種のチャレンジ要素にもなっているという仕組みだ。
EXエネミーはステージボス以上の強敵。特殊な行動を見極め、倒すことができるのならレアなアイテムや装備品を入手するチャンスでもあるが……!?
本作はゲームオーバー時の引き継ぎ要素や繰り返しプレイによる初期能力の強化要素はなく、難易度はやや高め。それだけに難所を突破した際の達成感はひとしおだ。難易度設定は2種類用意されているほか、1周クリア後には本編と異なる4ステージで、若干変化したルールで遊べる「EXモード」も解放される。
なお本作は、同作者による前作『アンダーグラウンドヒーロー』(紹介記事)の番外編的な作品となっている。ストーリーは前作をプレイしていると理解しやすい面もあるが、システム的には前作とは別物で、作者によると本作のみでも「問題なくプレイできます」とのこと。前作も独自のシステムに凝った意欲作でそれぞれ異なる魅力があるので、興味があればどちらからでも、是非プレイしてみてほしい。
[基本情報]
タイトル:アムネジアヒーロー
制作者:霜月六 氏
クリア時間:1周1時間程度(公称、プレイヤースキルやランダム要素の引き具合などによって前後)
対応OS:Windows(ダウンロード版)、Webブラウザ(ブラウザ版、PCでのプレイ推奨)
価格:無料
ダウンロードはこちらから(フリーゲーム夢現)
https://freegame-mugen.jp/roleplaying/game_7448.html
ブラウザ版のプレイはこちらから(RPGアツマール)
https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm5124