さまざまなフリーゲーム・インディーゲームが登場した2018年、みなさんはどんなゲームをプレイしただろうか?
2019年が明けてまだ間もないこの時期、これから遊ぶゲームを探し始めている人もいることだろう。今回は、そんな読者の方々に向けて、もぐらゲームスの執筆陣が、2018年にプレイしたゲームの中で特におすすめできるフリーゲーム・インディーゲーム14作品を一挙特集する。
各執筆者が2018年に遊んだ中で心に残った「各々の名作」をいくつか紹介していくので、気になった作品があればぜひ遊んでいただきたい。
昨年の記事はこちら。
もぐらゲームス執筆陣の選ぶ 2017年おすすめフリゲ・インディゲーム20選
『ピトロクス・ギア 』
『ピトロクス・ギア』はサークル「盛り合わせC」の制作によるシューティングアクションRPG。現在は作者サイト上にてダウンロードが可能となっている。
タイトルの通り「歯車」をモチーフとしており、人類が姿を消し「箱神(ピトロス)」が暮らす世界に降り立った記憶喪失の少女「ピクセル」が、自身の手掛かりを求めて「ピトロクス・ギア」と呼ばれる場所を目指す。
遠距離攻撃用のショットと近距離攻撃用のブレードの2種の攻撃と、回避アクションである「クロックアップ」から発動する「スロー」を駆使して戦いつつ探索を進めていく。
主人公の移動に慣性が効くためスピーディな機動戦が中心となり、移動に合わせて歯車がカラカラと鳴り響くなどキャラを操作する手ごたえを感じさせてくれる。
成長要素として、敵を倒してレベルアップした際に得られるポイントを使用して「スキルギア」を取得することでステータス強化を行うことができる。スキルギアはマス目状に配置されており、ひとつ取得するごとに隣接しているスキルギアが公開されていく。
スキルギアを埋めて強力なステータスアップを探り当てていく点も楽しみのひとつとなっている。
加えて、静寂感漂う終末世界の世界感や、キャラクター達の掛け合いも本作の魅力。
口は悪いが時に漢気を見せる相棒「エックス」が筆者のお気に入りだ。
(真野 崇)
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少女が歯車に乗って戦うシューティングアクションRPG『ピトロクス・ギア』公開 ほか ~今週のフリゲ・インディーゲームトピックス
タイトル: ピトロクス・ギア
制作者: 盛り合わせC
クリア時間: 12時間~
対応OS: Windows
価格: フリーウェア
ダウンロードはこちらから
http://neroringa.wixsite.com/moriawase-c/blank-2
『Lightfield HYPER Edition』
Lost in the Garden開発の近未来レースゲーム『Lightfield HYPER Edition』は、2017年にPlayStation4で配信されていた『Lightfield』のアッパーバージョンにあたり、2018年8月から配信中となっている。『HYPER Edition』からは待望となるPC版もリリースされた。
日本語表示にも対応しており、ローカライズは架け橋ゲームズが担当している。
本作を一言で言い表すならば、「壁を走り、空を飛ぶ」フリーダムなレースゲーム。プレイヤーが操作する飛行船は空中を自在に飛ぶことができるうえ、レースにおいてもチェックポイントさえ通過していればどのようなコースをとっていてもかまわない。
ただし空中ではスピードが出にくいため、より速くゴールを目指すためにはスナップ(設地)とジャンプによる加速も駆使していく必要がある。
天地無用のコースの数々は平衡感覚が無くなるトリップ感を味わえること間違いなし。
レース以外にも、ドリフトやアクロバットに挑戦したり、マップ内を散策してアイテムを集めるなどの楽しみ方もできるようになっている。
一般的なレースゲームに飽き足らない人にオススメしたい作品だ。ただし、三半規管の弱い方はご注意を…
(真野 崇)
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タイトル: Lightfield HYPER Edition
制作者: Lost in the space
クリア時間: 6時間~
対応OS: Windows / PlayStation4
価格: $14.99 / ¥1500
ダウンロードはこちらから
(STEAM)
(PlayStation4)
https://store.playstation.com/ja-jp/product/EP2292-CUSA07628_00-JPPS400000000001
『uVu -ユー バーサス ユニバース-』
有限会社アンブレラが2018年3月7日にリリースした『uVu -ユー バーサス ユニバース-』は、スマートデバイス向けの縦スクロール2Dシューティングゲーム。2DSTGにクリッカーゲームの要素が取り入れられている点が特徴となっている。
プレイヤーは自動生成される「ユニバース」内にあるエリアを、設定された制限時間内のなかで進むことになる。被弾すると残り時間がマイナスされ、タイムアップとなった場合はそれまでに進んだエリアの中から再出撃が可能。出撃回数は時間経過などで回復する。
最終エリアのボスを倒し囚われのプリンセスを解放することで、コレクションアイテムである「ギフト」を入手でき、更なる「ユニバース」へと進むことになる。
出撃前には集めたポイントを消費して制限時間の増加や攻撃力アップなどのパワーアップを行うことができる。パワーアップはポイントが続く限り際限なく行う事ができるため、2DSTGは自信が無いという人であっても、繰り返し出撃して強化を続けていけば敵を押し切って先へと進むことができる。
パワーアップによって億単位のダメージをたたき出し、規格外なまでに巨大化する自機は存在感抜群。
また、際限なくパワーアップが可能だからといって決してヌルくはなく、効率よく先に進むためには被弾を避けるのはもちろんのこと、複雑な動きを見せる敵編隊を素早く倒し、早回しで時間の消費を抑えるといった技量を活かす余地もある。育成要素と実力勝負が程よくブレンドされた、初心者から上級者まで唸らされる作品と言えるだろう。
(真野 崇)
タイトル: uVu -ユー バーサス ユニバース-
制作者: 有限会社アンブレラ
クリア時間: エンドレス
対応OS: iOS / Android
価格: 基本無料 (ゲーム内購入要素あり)
ダウンロードはこちらから
(iOS)
『ウルトラファイトだ!キャン太2』
2018年を振り返ってみると、大規模格闘ゲーム大会「EVO」の初の日本開催となる「EVO Japan」を筆頭に、「e-sports」「プロゲーマー」をキーワードとして対戦格闘ゲームというジャンルに改めて注目が集まった1年だったことには異論はないだろう。
そんな時節を顧みて、本稿でも格闘ゲームからオススメをひとつ選出したい。
『ウルトラファイトだ!キャン太2』はカス美社(羽良麻セルフ氏)が開発している2D対戦格闘ゲームである。2017年10月にitch.io等で初版が公開され、以降もバージョンアップが継続的に行われている。今後はSTEAMでの展開やキャラクターの追加なども計画されている。
ゲームを始めるとまず、キャラクターセレクト画面でトンガった奴らが目白押しのビジュアルと、朗々と歌われるラップに圧倒される。
本作はコマンド必殺技が存在せず、ワンボタンで必殺技や超必殺技が出せるシンプルな操作となっている。格闘ゲームの心得が多少なりともあれば、ゲームを始めて10分から15分程度でキャラクターをモノにして、対戦相手との間合いや攻撃の隙を推し量る本格的な対戦を始められるだろう。
システム面では、入力がシビアだが相手の攻撃をタイミングよく受け止めて優位を作り出すことができる「パーフェクトガード」や、1~3人の範囲でキャラクター数を決めることができるチームオーダー等が搭載されている。加えて、他の格闘ゲームでは見られない点として、キャラクター同士がぶつかっても押し合いにならずに入れ違いになるという特徴がある。
フリーキーさとシンプルさ、そしてシンプルであるが故のシビアさを兼ね備えた摩訶不思議な魅力を持った格闘ゲームとなっている。
ロビー方式のネットワーク対戦を標準搭載している点も注目ポイントだ。
(真野 崇)
タイトル: ウルトラファイトだ!キャン太2
制作者: カス美社
クリア時間: 30分~
対応OS: Windows
価格: フリーウェア
ダウンロードはこちらから
https://harama-self.itch.io/ultrafightdakyanta2
『FATAL TWELVE』『CisLugI-シスラギ-』
2018年もフリーゲーム・同人ゲームを中心にさまざまなゲームを楽しませていただいた。RPGについては個別記事で語りたいことをおおむね語りきったので、本稿ではテーマ的に重なる部分もあるノベルゲーム2作品『FATAL TWELVE』『CisLugI-シスラギ-』を併せて紹介したい。
まず1本目の『FATAL TWELVE』は、あいうえおカンパニー制作のサスペンスビジュアルノベル。爆発に巻き込まれて死んだ女子高生・獅子舞凛火をはじめとした12人が、お互いに脱落させ合い、残った者だけが死の運命をなかったことにできるという儀式≪女神の選定≫の参加者になったことから物語が展開していく。
他の参加者の氏名・死因・未練という3つの情報を集めて「指名」することで脱落させるというルールは頭脳戦によるデスゲームという昨今の人気ジャンルを想起させるもので、実際そういった要素も面白い作品ではあるのだが、何より胸を打つのは12週間にわたる≪女神の選定≫を通して掘り起こされる、参加者達それぞれの生き様だ。未練を知るというのはすなわちその人が大切にしている「今」や叶えたい「未来」を知ることでもあり、世代も出身国もバラバラな人々による群像劇という観点もある作品となっている。最初はいかにも敵役らしく描かれていた人物も深く知っていくことでその魅力を感じられ、それだけに脱落という事実が重く切ない。本作はフルボイスで、声の演技による真に迫った感情表現もキャラクターの魅力を引き出している。
一介の女子高生に過ぎなかった凛火が選定の参加者達と関わっていき、ときには想いを託され、運命と戦う決意を固めていくさまも熱い。選定の参加者には凛火の親友である未島海晴も入っており、自らを犠牲にしてまで凛火を生き残らせようとする海晴と二人で生きることを模索する凛火という、命懸けの重量級百合も注目のポイントだ。
デスゲームものとしては、基本ルールは情報戦でありつつも序盤では暴力の扱いに慣れた者が一般人から実力行使で情報を引き出したりと、特別な力を持たない者がこうした事態に巻き込まれたらどうなるかがリアルに描かれるのがユニーク。中盤以降は残った強者達による探り合い・化かし合いに手に汗を握ったり、終盤には≪女神の選定≫そのものの謎にも迫ったりと、進行に応じて異なる楽しみ方ができ、最後まで熱中できる内容となっている。
タイトル:FATAL TWELVE
制作者:あいうえおカンパニー
クリア時間:約20時間
対応OS:Windows/Mac OS/Linux
価格:2,500円前後(サイトによる)
ダウンロードはこちらから
2本目の『CisLugI-シスラギ-』は、NextVillage制作のSFノベルゲーム。自殺が合法化され、「死にたい」と口にするだけで脳内に埋め込まれた「尊厳維持装置」により苦しまず死ねるようになった世界を舞台とした作品で、主人公やヒロインの異なる4つのシナリオを収録したオムニバスという形式が特徴だ。
4つのシナリオはゲーム開始直後の「貴方にとって自殺は、」という問い掛けに対する選択肢で分岐する。たとえば「止めたい」を選ぶと始まるシナリオ「罪過の兎は手を伸ばす」は尊厳維持装置の撲滅を目指すテロリスト集団の工作員「日野原矜次」が主人公で、パワードスーツなどのガジェットも登場するアクション要素の強いシナリオだ。人情味と元軍人らしい冷徹さを併せ持つ矜次はとても主人公らしい主人公で、「英雄とは何か」をも問うような展開も見どころ。互いに支え合う仲間達との絆や宿敵との矜持や想いのぶつかり合い、絶望的な展開からの再起など、ストレートに熱い物語となっている。
また、最初の選択肢で「止めてはならない」を選ぶと始まるシナリオ「道化の電波時計は時を刻むのか」は、尊厳維持装置を製造する企業の社長である「金剛寺春人」が主人公。今は亡き許嫁の幻覚を見るというパラノイアに苛まれる彼が「幽霊が見える」と自称する少女と出逢うことから物語が動き出していく。サイコサスペンスと電波系が混然としたような展開と春人の人を食ったような性格が相まって終始プレイヤーを翻弄しつつ、そうして散りばめられた謎の数々がロジカルに解明されていく終盤は圧巻だ。
……といった感じで、登場人物の立ち位置から作品のテイストまで、本当にバラバラな作品が並立しているのが本作の醍醐味。各シナリオの主要人物が直接的、間接的に他のシナリオの人物と関わったりといったクロスオーバーも楽しめる。主人公達を取り巻くキャラクターも個性的な人物ばかりで、あるシナリオでは敵である人物が別のシナリオが主人公の導き手となったりと、オムニバスならではの多面性も描かれ、群像劇としても読み応えのある作品だ。
なお、4つのシナリオは最初からどれを選ぶこともでき扱いはあくまで同列……ではあるのだが、「罪過の兎は手を伸ばす」の終盤は、ある意味本作全体の集大成とも言えるような内容となっている。各シナリオは並行で読み進めることも可能なので、筆者としては「罪過の兎は手を伸ばす」でそろそろクライマックスかな、と感じた所から先を読む前には他のシナリオを読み終えておくことをお勧めしたい。
タイトル:CisLugI-シスラギ-
制作者:NextVillage
クリア時間:約15時間
対応OS:Windows
価格:3,240円
ダウンロードはこちらから
死と隣り合わせの世界観で、だからこそ炙り出される生を描いていく2作品。いずれもクオリティの高いキャラクターグラフィックや背景美術、そして情景や心情に寄り添った音楽の数々により、骨太なテーマに説得力を与えている。両作品とも体験版も用意されているので、テーマや世界観、キャラクターやビジュアルなど何かしら気になる点があれば、ぜひプレイしてみてほしい。
(中村 友次郎)
『Celeste』
「The Game Awards 2018」にてBEST INDEPENDENT GAME(ベストインディーゲーム)を受賞した山登りアクションAVG「Celeste」。その高難易度で名を馳せた本作ですが、攻略法をひらめいて達成したときの喜びやドラマチックなストーリーテリングなど、一言では語りきれない魅力に溢れたタイトルでもあります。
主人公Madelineが挑むのは、登る者の内面を実体化する山「セレステマウンテン」。ひとつひとつのマップに仕組まれたギミックは綿密に配置されており、ステージごとにさまざまなバリエーションを見せてきます。少しの操作の違いが命取りとなる一方、リトライの時間がほとんどかからないため、モチベーションが途切れることなく挑戦し続けることが可能。何度も死を繰り返しながら攻略の糸口を見つけ、頂上に到達したときの達成感は、ほかには代えがたいものがあります。
Celesteの注目すべきもうひとつの側面は、ゲームプレイと物語の融合。Celesteはけして雄弁に多くを語るゲームではありません。しかし、精神疾患を抱えたMadelineが、登山者や自身の分身との出会いの中で心が変化していく様子を、幻想的なマップデザインやシームレスな音楽によってダイナミックに描いています。何百、何千の死を乗り越えて限界を超えて挑むプレイヤーと、自身の試練を打ち勝とうとするMadelineが一体化する終盤は、ゲームでしか成し得ない鮮烈な体験をさせてくれます。
(ノンジャンル人生)
関連記事:ひらめきと挑戦の傑作アクションアドベンチャー『Celeste』 幾多の死を乗り越え、遙かなる頂きを目指す
タイトル: CELESTE
制作者: Matt Makes Games
クリア時間: 7時間~
対応OS: Windows、Mac、Linux、Nintendo Switch
価格: 1,980円
ダウンロードはこちらから
(Nintendo Switch)
https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000010822
『ALICE HOLE』
「ALICE HOLE」では小さな部屋で目覚めた少女アリスを操作して、「フランシスカに会わなければいけない」というわずかな記憶を頼りに、広大な迷宮を渡り歩くこととなります。いわゆるダンジョン探索型RPGである本作の魅力は、例えばメトロイドヴァニアやダークソウルシリーズのように、自分の手でダンジョンを探索して道を切り開いていくことにあります。
アリスの行く手を阻むのは、古代の王が眠る墓、人のいない城下町、炎が燃え盛る地下迷宮など……。そのひとつひとつのダンジョンに大量のモンスターやトラップが配置される一方、ダンジョンの怪しげな所には隠し部屋があり、強力な装備や閉ざされた扉の鍵が見つかることも。探究心が刺激されたプレイヤーは、いつの間にか迷宮の奥深くへと誘われます。
また、その世界観は謎めいており、迷宮に散らばった書物を集めていくことで、迷宮の全貌が少しずつ解き明かされていくのも魅力のひとつ。断片的な情報が集まることで、かつてこの世界で何が起こったのか判明し、やがてアリスは物語の確信に迫ります。
ALICE HOLEは往年の名作フリゲ「Nepheshel」「Histoire」の構成を引き継いでおり、クラシカルな遊び心地を保ちつつも、それぞれの持ち味がバランスよく整理されています。新たに「666人目のアリス」シナリオも追加され、より壮大な冒険があなたを待っています。
(ノンジャンル人生)
関連記事:フリゲ探索RPG『ALICE HOLE』 名作の遺伝子を引き継ぐ迷宮を制して、立ちはだかる困難を“克服”せよ!
タイトル: ALICE HOLE
制作者: 黒木静
クリア時間: 10時間~30時間
対応OS: Windows
価格: 無料
ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/16515
『Into the Breach』
はるか未来、地中より現れた「Vek」なる巨大生物群により、文明社会は崩壊。人類も滅亡寸前にまで追い込まれた。巨大戦闘用メックと搭乗するタイムトラベラー達は過去へと遡り、来たる滅びの未来を変えるための戦いに身を投じる。『Into the Breach』は宇宙船ローグライク『FTL:Faster than Light』で鮮烈なデビューを飾ったインディーディベロッパー「Subset Games」による、完全新作の戦略シミュレーション。2018年2月27日、PCゲーム配信プラットフォーム「Steam」でリリースされた。
三体のメックを動かし、多彩な装備を駆使してVekの脅威を退けていくというのが主な内容。戦略シミュレーション王道のターン制でゲームは展開するが、「Vekがマップを移動→攻撃目標などが決定→プレイヤーのターン開始→ターン終了後、Vekによる目標への攻撃などが実施」と、あらかじめ敵の行動と結果が明示され、それを覆すための戦術、戦略を練り、実行していくプレイスタイルを最大の特色としている。
また、Vekは居住区、民間施設などのマップ上の建物を目標として定めてくる。建物が破壊されると画面上部に表示された「パワーグリッド」が喪失し、全て無くなるとゲームオーバー。滅びの未来が確定し、最初のマップからやり直しとなる。しかし、マップごとの戦闘は5ターン以内に決着する仕組みで、所要時間も最長で10分程度と短め。エンディングまでの一周に要する時間も1時間半~3時間程度。この手のジャンルとしては珍しい、抜群のテンポと高いリプレイ性を誇る。ただその分、マップごとの密度は濃い。特にVekは毎ターン増援が現れては周到な攻撃を展開し、プレイヤー側も戦力面からして全滅させるにも様々な試行錯誤が要求されるので、文字通り、脳が休まることのない戦いが繰り広げられる。ゲームオーバーからやり直す度にマップの形状、クリア特典も変化するランダム要素も実装されているので、なおのこと一筋縄ではいかない。
昔懐かしいビジュアルに小さなマップと、お手軽な見た目をしているが、中身はかなりの本格派。戦術、戦略を練る醍醐味をこの上ないほど味わえる作品に完成されている。考え抜いた戦略が見事に当てはまって、ピンチな状況を覆せた時の快感も格別。移動だけに費やすパートを発生させず、常に戦闘が展開されるよう設計されたゲームデザイン、バランスも極まっていて、遊び始めれば1~2時間が裕に飛ぶなど、中毒性も高い。他にも個性に富んだメックごとの性能と武器、デフレ特化の数値周り、タイムトラベルの設定を活かした周回要素など、語り尽くせないほどの魅力がある。
2018年8月31日には海外向けにNintendo Switch版も配信され、今後、日本での展開も予定されている。戦略シミュレーションの最も面白い部分を磨き上げた、傑作と豪語できる逸品に仕上がっているので、同ジャンルの好きなプレイヤーなら要プレイだ。難易度選択機能も搭載されているので、ジャンルに苦手意識のあるプレイヤーも興味があればぜひ。ただ、繰り返しになるが中毒性は非常に高い。くれぐれも日常生活に支障をきたさぬよう。
(シェループ)
タイトル:『Into the Breach』
制作者: Subset Games
クリア時間: 1時間半~3時間(※やり込み要素のコンプリートは除く)
対応OS: PC(Windows、Mac、Linux)、Nintendo Switch(※2019年1月現在、海外のみ)
価格: ¥1520
購入はこちらから
※Nintendo Switch版(海外アカウントがあれば、国内からも購入可能)
https://www.nintendo.com/games/detail/into-the-breach-switch
『Copy Kitty』
アクションゲーム、シューティングゲーム共に、巨大なボスが派手な爆発と爆音と共に散る瞬間は、強敵を打ち倒したという手応えと気持ちよさを高めてくれる。だが、あくまでも筆者の主観だが、シューティングゲームはまだしも、アクションゲームはここ数年、特にインディー界隈において、その演出が一歩足りていない作品が目につく。
そういうのを見る度に言いたくなる。
「もっと派手に散れよ!爆音響かせろよ!」と。
そんな筆者の求める爆発観(?)に応えてくれたのが『Copy Kitty』だ。二人の個人開発者によって結成された「Nuclear Strawberry」制作の横スクロール型アクションゲームで、2018年4月20日に「Steam」、「itch.io」でリリース。制作には7年近くを費やしており、2016年頃より早期アクセス版がリリースされ、コミュニティからのフィードバックを受けながら完成へと漕ぎ着けた。
ヒーローに憧れる猫の少女「Boki」が、叔父の「Savant」が作った電脳世界を舞台に様々なロボット軍団を相手に戦いを繰り広げていくというストーリー。短めのステージを舞台に、ターゲットとして指定される敵などを撃破していく単純明快な内容だ。
戦闘はショット攻撃を駆使して立ち回る形だが、その種類の豊富さが最大の特色。初期装備の単発のほか、敵が落とす武器アイテムを獲得することによって、追尾型、拡散型、グレネード、電撃、さらには化学薬品に鞭、昇竜拳(?!)まで、多彩な攻撃を繰り出せる。さらに武器は最大三つまでストックでき、対応するボタンを押せば、それらをミックスしたショットを放つことも可能。追尾性能を持った爆弾、電気を帯びた剣まで、その組み合わせはなんと170以上におよび、その全てを発見、使いこなそうとするだけでも相当なやり込みを強いられる作りになっている。おまけにステージも130以上。さらに叔父の「Savant」でプレイする専用シナリオも用意されているほか、宙を漂いながらステージを進んで敵を戦うなど、戦闘スタイルもBokiと別物。全要素を堪能するだけでも、アクションゲームとしては規格外なボリュームになっているというのは容易に想像が付くだろう。
演出面にもこだわっており、敵を倒した時には派手な爆発エフェクトが周辺一帯を覆い、気持ちのいい爆発音が鳴り響く。最後のターゲット、ボスを倒した時に至っては専用のエフェクトが画面全体を覆い尽くすほどに広がり、音圧十分の爆発音も鳴って、強敵を打ち倒した手応えと達成感をこの上ないほど引き立てる。ボス戦も序盤は相手の出方を読みながら動く真剣勝負だが、ボスの持つ武器を手にして以降はその威力に任せた「処刑タイム」な展開に一転するという、独特な構成になっていて面白い。
「アクションゲームにもっと爆発を!」と筆者のように欲求不満な思いがあるなら、ぜひプレイいただきたい快作。派手にした反動で視認性が悪い、組み合わせの豊富さゆえに全容の把握が困難を極めるなどの分かりやすい難点があるが、そんなの知ったことかと派手さを徹底的に突き詰め、貫き通した作りは圧巻。混じりけなしのインディー魂、そして爆裂魂に刮目せよ!ちなみに日本語対応の予定もあるとのこと。作中のテキスト量が膨大なため、実現まで時間を要するようだが、待ち遠しい限りだ。
(シェループ)
タイトル:『Copy Kitty』
制作者: Nuclear Strawberry(※販売:Degica)
クリア時間: 4~5時間(※Savant編込みなら16~20時間ほど)
対応OS: PC(Windows、Mac)
価格: ¥1520
購入はこちらから
※Steam
※itch.io
https://entanma.itch.io/copy-kitty
『The Messenger』
「悪魔王」率いる軍勢により、滅亡の危機に陥った一族を救うべく、世界の命運を握る「巻物」を手にした忍者が呪われた世界を駆ける。
『The Messenger』はカナダ・ケベック州を拠点とするインディーディベロッパー「Sabotage」制作による横スクロール忍者アクションゲーム。2018年8月31日にNintendo Switch、PC(Windows)向けにリリースされた。販売はDevolver Digital、日本語版のローカライズ並びにパブリッシングサポートは架け橋ゲームズが担当している。
刀、手裏剣を駆使して行く手を阻む悪魔の軍勢を倒し、ステージ最後に待ち構えるボスの討伐を目指す、大枠こそ正統派のステージクリア型アクションゲーム。プレイヤーアクションも壁への貼り付き、滑空など、これぞ忍者なものが揃っており、軽快な挙動と手応えを特色とした操作感を味わえる。また、ステージ上で手に入る「時のかけら」を消費することによる、スキルツリー形式のステータス強化要素も。道中にも「力の封印」なるアイテムを探し出す寄り道要素があり、一度クリアするだけでは終わらない密度で構成されている。
ここまでの概略だけなら、平凡なアクションゲームとの印象に終わるだろう。本作が凄いのはステージクリア型アクションというのが仮の姿であることだ。独自のシステムで、8ビットと16ビットの世界を行き来できる、グラフィックから音楽も一変する仕掛けが盛り込まれているのだが、この解禁と同時にゲーム内容が著しく変わる。ステージクリア型から、全く別のアクションゲームになってしまうのだ。その詳細は実際にプレイしてのお楽しみだが、8ビットと16ビットの二種類のグラフィック、音楽を用意したことに納得の意味を設けた、とても興味深いものになっている。同時に本作が真の意味で忍者を体現したゲームであることも分かる。まさにステージクリア型は世を忍ぶ仮の姿、しかしてその実態は……だ。実のところ、既に公式側で真の姿はネタバレ済みだったりするのだが、あえてこの紹介では作中に登場する青頭巾の店主の意向に沿い、伏せよう。
他にストーリーも忍者のイメージにそぐわぬ、ファンタジー全開のなんでもありな内容。メタフィクションなネタも多く、中でもステージの中間地点でもある扉の先に待つ青頭巾の店主との会話はハチャメチャの極み。「面白い話は?」と尋ねれば、本当にゲームと無関係の面白い話を聞かせてくれるというだけでも、その一端が分かるだろう。
ちなみに本作の翻訳を担当された小川公貴氏(※代表作:『Owlboy』、『RUINER』、『Battle Chef Brigade』など)いわく、総テキストの半分がこの面白い話に割かれているとのこと。力の入れどころがおかしい。
灯篭を攻撃して行う二段ジャンプの癖の強さ、先述の実態が明かされて以降、落下ミスが余計になる難点もあるが、途中からのゲーム内容変化、メタフィクション満載のストーリーで強烈な印象を残してくれる本作。2019年も無料アップデートによるコンテンツ追加など、新展開が告知されている。今から遊んでも遅くはないので、若き忍者と共に不思議いっぱいな世界を旅してみよう。旅に疲れたら、店主から面白い話を聞いてみよう。きっと明日に役立つ無駄な何かが手に入る……かどうかは分かりません。
(シェループ)
タイトル:『The Messenger』
制作者: Sabotage(※販売:Devolver Digital / ※日本語版ローカライズ:架け橋ゲームズ)
クリア時間: 15~20時間(※実績、やり込み要素の攻略を除く)
対応OS: Nintendo Switch、PC(Windows、Mac)
価格: ¥1980
購入はこちらから
※Nintendo Switch版
https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000012841
※PC(Windows)版
『VASTYNEX』
2018年はシューティングが賑わいを見せた一年でもあった。特にNintendo Switchでは往年の名作が数多くリリースされたほか、新作でも『BLACK BIRD(ブラックバード)』が話題を呼び、当もぐらゲームスにもレビューが掲載された『ネコネイビー』も『デイドリーム・エディション』なる新要素を追加したパワーアップ版がリリースされた。
もちろん、PCでもインディー、フリーを問わず、魅力溢れる作品が多数リリース。その中から今回は『VASTYNEX(ヴァスティネックス)』をピックアップする。本作は2018年8月22日にフリーゲームとして配布された作品。制作は個人のWebサイト「喜撃屋本舗」において、多種多様なシューティングゲームを公開・無料配布しているzakichi氏。同年1月12日にステージ3まで遊べる試遊版を公開し、幾度かのアップデートを経た後、完成版の公開へと至った。ダウンロードは先述の「喜撃屋本舗」より実施する形となり、紹介ページのある「フリーゲーム夢現」からでも同様のルートを辿る形となる。
内容は王道の横スクロール型シューティングゲームで、五つの武装を状況に応じて切り替え、迫り来る敵を撃墜していく。最大の特色は突き抜けた”熱さ”。自機、背景に至るまで粗いドット絵で描写されているが、その見た目とは裏腹に動きは滑らかで、ステージの展開に合わせたドラマティックな演出と派手な爆発でプレイヤーの感情を揺さぶる。バックに流れる音楽もそれらを引き立てる熱い楽曲が揃っており、特にボス戦はステージごとに固有の曲を設けているこだわりぶりだ。
ボスにもシューティングゲーム好きなら思わず突っ込みたくなるだけでなく、腹筋までも刺激される、往年の名作を元にした驚愕のパロディが詰め込まれている。しかも、本編に登場する全てのボスは段階的に変形。その形態もパロディてんこ盛りに留まらず、プレイヤーの想像の裏を突いてくるパターンになっているので、元ネタを全く知らずとも楽しませてくれる。中でもステージ3のボスは恐れ知らずにも限度がある、もの凄いことになっているので必見だ。戦闘中の演出もクライマックス感溢れる熱さ。中盤のボスなのに、最終ボスと戦っているかのように錯覚してしまうほどだ。念のためだが、最終ステージであることを伝える演出はちゃんとある。騙されぬようご用心を。騙されても実害ゼロだが。
昨今のシューティングゲームにしては珍しく難易度選択機能がない一本特化型で、ゲームオーバー後のリトライでもクレジットを消費する仕組みだが、その数が9と多めで、意外に力押しも効く。全体のバランスも回避困難な弾幕が展開される場面も少なく、トライ&エラーを繰り返すことで突破口も見えてくる理に適った調整が図られている。ビジュアル通りに視認性の悪さを感じてしまう場面もあるほか、一部、激しい点滅表現(しかも色合い的に危険な類の)が含まれていたりもするが、完成度は高く、火傷するほどの熱さを秘めた作品に完成されている。シューティングゲーム好き、特に80年代から同ジャンルを親しんでいる世代なら是が非でも遊ぶ意義のある作品。粗いビジュアルの裏に潜む、猪突猛進・天元突破な本気のパロディとドラマティックなゲーム展開を体験してみよう。その先にあなたは本作に込められた尋常ならざぬ”シューティング・ラヴ”を見る。
(シェループ)
関連記事:見た目以上に熱い展開目白押しのフリゲSTG『VASTYNEX』。五つの武装を駆使して、変形を繰り返す”ヤツラ”を撃ち落とせ!
タイトル: 『VASTYNEX』
制作者:喜撃屋本舗(zakichi)
クリア時間: 30~50分
対応OS: PC(Windows)
備考:一部、激しい点滅表現あり
価格: 無料
ダウンロードはこちらから
http://zakichi.ojaru.jp/vastynex.html
※フリーゲーム夢現(紹介ページ)
https://freegame-mugen.jp/shooting/game_7382.html
『GRIS』
年の瀬の迫る12月には多くの新作ゲームがリリースされる。その中には一年のベストタイトルに名を連ねる、「遅れてやってきた逸材」な新作が紛れ込んでいることがあり、一度、決めかけていた候補が増えたり、入れ替わる展開に見舞われたりする。2018年もまた、そのようなタイトルがNintendo Switch、PC(Windows、Mac)向けに参上した。『GRIS』である。かつてユービーアイソフトなどに所属した二人の開発者、スペインはバルセロナで活躍するアーティストによって設立した独立系スタジオ「Nomada Studio」のデビュー作。販売は先述の『The Messenger』に引き続きDevolver Digital、日本語版ローカライズおよびパブリッシングサポートも架け橋ゲームズが担当している。
美しい歌声を持つ少女「GRIS」はある時、声を発せられなくなり、その悲しみから絶望に暮れてしまう。歩くこともままならぬ彼女だったが、やがて気力を取り戻し、失われた声を取り戻す手がかりを求め、不思議な世界を巡る旅に出るというストーリー。
内容は横スクロールで展開するアクションゲームで、基本的には主人公のGRISを動かして行く手を阻む障害を乗り越えながら、「星」を集めていく。道中に敵は登場せず、戦闘も発生しない静かな作りであるが、舞台となる世界(フィールド)がGRISの心情を投影したかのような構造をしていて、先へ進む度に思わず息を飲む変化を見せていくようになっている。始めは白黒だった世界に色が戻って風が吹き、不思議な生き物が現れるなどして活気づいたり、自然が蘇ったり。合わせてGRISのアクションも増え、壊れた床を壊せるようになったり、水中を魚のように進めるようになるなど、行動範囲も広がっていく。それに合わせるかのように現れる、彼女の内面の不安を具現化した”闇”。進むべき道を破壊したり、巨大な怪物になって迫ってきたりのスリリングな逃亡劇も繰り広げられる。逃げるだけでなく正面から闇に立ち向かうこともあり、その際には声を失って絶望した少女の再生が芸術的なグラフィックと場面に見合った音楽、そしてアクションゲーム独自のプレイスタイルと同時に描かれ、言葉に表しがたい高揚感が襲い来る。様々な経験を経て辿り着くエンディングもそれまでの集大成と言わんばかりの美しさで、思わず見とれてしまうほど。
戦闘がなく、謎解きも一部を除いて簡単な作りなので、難易度は低め。しかし、適度に緩急をつけた構成と素晴らしい演出、行動範囲の広がりもあって、アクションゲームとしての確かな手応えも味わえる、秀逸なバランスになっている。エンディングまでに要する時間も2~4時間程度と短めだが、色んな要素が凝縮された構成もあって物足りなさは皆無。手応えを求めるプレイヤーを対象に実績を始めとするやり込み要素も備えられている。
一部、プレイヤーが小さく表示されて場所を見失う場面(特にNintendo Switchの携帯モードでプレイした際に顕著)がありはするものの、アクションから演出、ストーリーに至るまで高いレベルでまとめられた正真正銘の”作品”。美しい映像と音楽、そしてアクションゲームという名の”体験”を通じて描かれる再生と喪失の物語を体験してみよう。
2018年12月13日リリースということで、これまで取り上げた作品の中でも特に新しいが、間違いなく同年度の締め括りに相応しい一本。雰囲気を楽しむゲームが好きであれば、今すぐにでもプレイしてみていただきたい。
(シェループ)
タイトル:『GRIS』
制作者: Nomada Studio(※販売:Devolver Digital / ※日本語版ローカライズ:架け橋ゲームズ)
クリア時間: 2~4時間(※やり込み要素のコンプリートは除く)
対応OS: Nintendo Switch、PC(Windows、Mac)
価格: ¥1780
購入はこちらから
※Nintendo Switch版
https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000014007
※PC(Windows、Mac)版
『ヨルダケ 』
毎晩、虚ろな目で外へ出かけてしまうようになった兄。心配した弟がその後を追うと、異様な光景の広がる地下世界に辿り着いていた…。
過去に「睡眠時遊行症(すいみんじゆうこうしょう)」、またの名を「夢遊病(むゆうびょう)」の疑いをかけられたイラストレーターで個人制作者のじゃむさんっぽいど氏が、その経験を元に制作した探索型アドベンチャーゲーム。2018年9月25日に「ふりーむ!」にて、PC(Windows)用フリーゲームとして配信された。
横にスクロールするマップを進み、何かに導かれるように地下世界の奥地へ向かう兄を追いかけていくという内容。行く手には様々な障害が待ち受けており、それらを突破したり、時に戦闘を繰り広げていく。さらに本作はタイトル通り”夜だけ”、午後21時から午前3時の間にしかプレイできない制限がかけられている。それ以外の時間に起動しても、特殊なメッセージが表示されたり、主人公が就寝中の姿が映し出されるだけで、そこから先へと進むことは叶わず。極めて革新的且つ、独特な設計になっている。
また、台詞、メニュー周りのテキストも日本語、外国語ですらない独自言語で記述。登場人物が何を言っているのか、何が書かれているかも理解できない。ただ、各文字は日本語の五十音順に基づいて関連付けられているので、法則性を発見すれば分かるようになるほか、ゲームを進めるに当たって、それらを理解していないと乗り越えられない場面はない。ただ、何が起こっているのか全く分からず進んでいくので、心はモヤモヤ。全く分からないからこその得体の知れぬ不気味さも同時に襲い掛かってくる。これらの特色からも明らかな通りに、とにかく作りが異質。尖りに尖ったゲームに仕上げられている。
しかしながら、深海をモチーフにした世界観、異様な姿をした住民達と居心地の悪い空気感、言語の法則を発見することで判明する驚愕の真実など、数多くの魅力的な要素が随所にあり、唯一無二の体験を提供する。グラフィック、音楽を始めとする演出周りも独特の世界観を引き立てており、特に前者の「いけない世界に迷い込んだ」という気持ちを高める色遣いとデザインは圧巻だ。戦闘も基本はオーソドックスなコマンド選択型だが、一対一で相手に語りかけ、ハートゲージを満タンにすれば勝利という一風変わったルールが異彩を放つ。アドベンチャーということでレベルの概念はなく、プレイヤーの体力はハートの数で示され、受けたダメージは戦闘終了後に回復、他の回復手段は限定的などの独自仕様もあるほか、戦闘で敗北すると……これ以上は実際にご覧いただきたい。
居心地の悪さを演出するため、メッセージ送りの遅さなど、快適性を意図的に犠牲にしている部分もあり、先述の制限から現実的な意味でも人を選ぶが、だからこその個性と魅力が際立った作品。純粋に探索型アドベンチャーとしても、優しすぎず難しすぎずの謎解きの難易度、特徴的なマップの構造など、見所の多い作りになっているので、そちら目的のプレイヤーも要チェック。時間の制限からプレイするのが難しいという方も、エンディングまでの所要時間は1~2時間程度と短めなので、どこかしら合間を縫ってプレイしてみて欲しい。
それでは、良き夜のひとときを。おやすみなさい。
(シェループ)
関連記事:よるしかあそべない、ふしぎなあーるぴーじー『ヨルダケ』 こんやも、さまようあにをおいかけます。
タイトル:『ヨルダケ』
制作者: じゃむさんっぽいど
クリア時間: 1~2時間
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料
備考:出血、ホラー描写あり(※推奨年齢:12歳以上)
ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/18573
『細胞神曲 -Cell of Empireo-』
「ゲームという形式を、非常に有効に活用した物語体験」を楽しめる作品。ホラーあり、探索あり、バイオレンスあり、アクションあり、謎解きあり……と、一口でどんなゲームかを説明するのかは難しいが、それらすべての要素がゲーム内で語られる「物語」にとって不可欠な体験となっているように感じる。
探偵事務所に勤める阿藤春樹は、ある日、後輩の失踪事件に遭遇する。手掛かりとなるのは「至高天研究所」という宗教団体。阿藤は、この得体のしれない団体の施設に潜入することになるが……。
物語自体の質の高さや個々の演出要素に加え、登場人物の掘り下げがとても巧み。「人間を描くこと」に向かい合っているからこそのシナリオの奥深さであり、マルチエンディングで描かれるストーリーをそれぞれ追うだけでなく、ゲーム中に入手できる資料などを読み進めていくことで、人間や物語の多面性を味わうことができるだろう。
2018年プレイしたフリーゲームの中では『真昼の暗黒』と並んでシナリオが印象深いゲーム。以前にリリースされた体験版の段階で作りこみの綿密さが目立っていたが、完成版でも全編を通して変わらないこだわりが感じられた。ぜひ、この作品に立ち向かってほしい。
(poroLogue)
タイトル:『細胞神曲 -Cell of Empireo-』
制作者: 鱶尾工業
クリア時間: 10~30時間
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料
備考:バイオレンス、ホラー描写あり(※推奨年齢:17歳以上)
ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/17735