白と黒の石を交互に盤の上へ挟むように打ち合っていき、最終的にひっくり返した色の多い側が勝利となる「オセロ」。その起源は19世紀のイギリスで考案・誕生した「リバーシ」であるとか、考案者を名乗る人物が中学生時代に囲碁を基に生み出した遊びであるなど、所説あってハッキリしないが、将棋、囲碁に並ぶ歴史あるボードゲームなのは間違いない。
今回紹介する『HASANDE PON! -はさんでポン!-』は、そんなオセロを基にしたアクションパズルゲームだ。2018年10月5日にWindows用フリーゲームとして、同ゲーム配信サイトの「ふりーむ!」、「フリーゲーム夢現」にてリリース。
作者はmdk氏(mdkGAMES)。
キャラクターイラストは漫画家兼イラストレーターの七条メルル氏が担当している。
パネルをひっくり返し、敵のロボットを倒せ!
ルールは単純明快。自機となるロボットを操作し、8×8のフィールド中央に置かれた赤と青のパネルをオセロの要領で挟んでひっくり返しながら、敵のロボットを倒していく。
制限時間内に全ての敵ロボットを倒せればステージクリア。
時間切れ、敵ロボットに接触、パネルを置けるマスが無くなるとゲームオーバーとなる。
プレイヤーができることは移動とパネル設置の二つ。パネルは自機の色に準じたものが置かれ、それと同時に違う色へと変化する。青なら赤、赤なら青という具合だ。また、パネルの置けるマス目は、自機の色で1つ以上挟めるパネルがある場所に限定され、それ以外の所に好き勝手置くことはできない。読んで字のごとくのオセロだ。もちろん、間にあるパネルも挟んだ際の色に変わる(ひっくり返る)仕組みとなっている。
そのひっくり返るパネルの上に敵ロボットが重なっていれば、巻き込む形で倒すことができる。以上の手順を踏んで、フィールドを動き回る敵ロボットを倒していくのが基本となる。
ひっくり返すタイミングに合わせることから、難しそうに感じるかもしれないが、敵ロボットの行動ルートは完全に固定されている。なので、あらかじめどのようなルートを辿るかを把握して、パネルの設置を心がけていけば、難なく倒せるようになっている。
しかし、ステージが進むと時限式の地雷を設置する、高速で移動する特殊なタイプが登場。一度に登場する数も増え、行動ルートが特定のタイミングで重なり合うことも生じるようになって、見極めるのが難しくなる。そして、あるステージでは行動範囲を狭めるブロックも登場し、パネルを引っくり返すのにも一工夫必要となることも。
このように、やることはとても簡単。だが、オセロ特有の適切な場所にパネルを置き、範囲を広げていくテクニック、敵ロボットがどう動くかを見極めるアクションゲーム的なテクニックの二つが求められてくるのもあって、なかなかどうしてやり応えのあるゲームに仕上げられている。アイディア勝負の姿勢を貫き通した作りだ。
”一人で遊べるオセロ”を実現したゲームシステム
例によって、本作の魅力はゲームシステムにある。
特に”一人で遊べるオセロ”を実現しているのが面白い。オセロというのは基本的に二人前提の遊びだ。一人で遊ぶことは想定されていない。一説によれば、一人で遊ぶことによって精神面が鍛えられ、思いやりの心も学べるらしいが(ほんまかいな)、明らかにハードコアな遊び方であるのは間違いない。
そんなオセロを一人でも手軽に遊べるようにするには、どんな案があるか。本作はまさにその答えを示している。アクションゲームの敵と戦う要素、その動きを見切って決定打を放つ楽しさ、そして一つの結果を導くための流れを組み立てては探るパズルゲーム由来の試行錯誤。これらをオセロの枠組みに入れ、違和感のない一人プレイを実現させている。
パネルをひっくり返して自分のものにしていくことを、敵を倒しやすくするための環境を作るという、対戦主体のオセロと異なる意味合いを持たせているのも面白い。範囲を広げれば広げ、複数のパネルをひっくり返せる状況を作れれば、より多くの敵をまとめて倒せ、高得点も得られるメリットが得られるのも、オセロ特有の逆転を狙う面白さと爽快感に満ちている。
リスクを重ねれば重ねるほど、大きなリターンが得られるよう作られているのもこのシステムの秀逸な部分だ。実際に多くのパネルをひっくり返すのに合わせて敵も倒せれば、相応の高得点を獲得できる。しかし先の通り、パネルが置けなくなればゲームオーバー。敵と接触した場合もまた然りなので、狙うとなると非常に難しい。
それもあって、上手く決められた時の快感はひとしお。こう言ったパズルゲームなどではお馴染みの溜めに溜めた後、解き放つ楽しさと高得点を目指すやり込みの楽しさもしっかりしていて、極め甲斐もある。
実際にスコアアタックを楽しんでもらいたい意図でか、他のプレイヤーに最高スコアを見せつけるTwitterと連携したシェア機能も実装。限界を突き詰めるとなれば、何度でも遊べる。
ステージも全部で10、一つクリアするのにかかる時間も最長で3分程度と、短時間で何度も遊べることを狙ってか、控え目にされているので、やり込みのハードルも低い。
裏を返せば、クリア目的で遊ぶとアッサリした内容だが、面白さは盤石で、アイディアで勝負した本作の制作姿勢を実感させられる。オセロという二人前提の遊びをいかなる形で一人用にしたのか。そこからどんな遊びが生まれたのか。この一つの問いの答えが気になるのなら、今すぐにでも本作をダウンロードし、遊んでみていただきたい。
短めながら、可能性を感じさせる作品
全体的に興味深い作りをした本作だが、勿体なさを感じてしまう部分もある。特に終盤のステージ10は、それまでの9つのステージと趣の異なる内容にながら、一発ネタで終わってしまっているのが大変に惜しい。あと2つか、3つぐらいはあっても良かった。
スコアアタックも、ゲームオーバー後にそれまで獲得したスコアがリセットされないのは甘い。リセットする仕様にすれば、クリアするのを目的に遊んだ時とは異なる緊張感のある展開が描けていただけでなく、プレイスタイルの差別化にも繋がっていただけに、可能であれば検討して欲しかったところである。
グラフィックのパターンも少なく、音楽も数曲程度なので演出面も控え目。ただ、スッキリしているのもあって、お洒落な雰囲気が醸し出されている。ストーリーが無いため、位置付け的に謎の存在だったりするが、右下に描かれたロボットの少女もパネルをひっくり返したり、ミスする度に可愛らしいリアクションを見せてくれるので必見だ。
コンパクトなゲームだが、侮りがたい魅力が詰まった本作。少し変わった、それでいて短時間で遊べるアクションパズルをお求めであれば、ぜひプレイしてみていただきたい一本だ。まさに”一人で遊べるオセロ”と言わんばかりの意外な手ごわさをぜひ。
筆者個人としては、発展の可能性を節々で感じられたので、いずれステージ総数、仕掛け、演出面の強化を施した続編やリメイクの登場に期待したいところだ。もちろん、その暁にはロボットの少女も続投で何卒、お願いいたします。
[基本情報]
タイトル:『HASANDE PON! -はさんでポン!-』
制作者: mdk(mdkGAMES)
クリア時間: 25~40分
難易度:初級~上級者向け
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料
ダウンロードはこちらから
※ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/18637