Quantcast
Channel: フリーゲーム –もぐらゲームス
Viewing all articles
Browse latest Browse all 742

不思議な杖を手にした少年の記憶と使命を”四択クイズ”と共に探る物語。手の込んだグラフィックが光るRPG風クイズゲーム『IQuest』

$
0
0

問題を出し、相手にその答えを求める遊びとして知られる「クイズ(Quiz)」。しかし、明確な定義というものはなく、「なぞなぞ」、「クロスワードパズル」と言ったものもクイズに該当するとされる。ただ、その言葉から来る一般的なイメージと言えば、知識を求められる問題群に素早く回答し、その正解数を競い合う、テレビの「クイズ番組」だろう。

そんなクイズとコンピュータゲームの歴史は意外にも古く、1970年代から既にアーケードゲーム界隈で人気を博していたと言われる。昨今も同界隈では様々な作品が稼働しているほか、スマートフォンアプリ、ブラウザゲームの界隈においてヒット作が誕生している。パソコンゲームでもクイズ系ゲームは多く、個人が制作したものも多く存在する。

iquest_01

そのようなフリーゲームとして制作されたクイズ系タイトルの中から今回、『IQuest(アイキュエスト)』(作者:KOPAR氏)を紹介する。本作は「WOLF RPGエディター」製のPC(Windows)用クイズゲーム。2018年12月31日にフリーゲーム配信サイト「ふりーむ!」にて公開された作品である。ちなみに同サイトの「第14回ふりーむコンテスト」で、「ピクセルアート部門」の金賞に輝いている。

アシスタントとタッグを組んで、四択クイズという名の戦闘に挑め!

iquest_02

とある遺跡。この中で、一人の少年が目覚めた。
だが、彼は出自も名前も覚えていない、記憶喪失の状態にあった。
さらに奇妙な杖を手にしていた。

そして、困惑する彼の元に何者かの声が聴こえてくる。それに導かれるように少年は、遺跡内で巡り合った少女「テクシー」とその仲間達共に自らの記憶と出自を辿るため、周辺遺跡の探査を開始する。
果たして、彼は何に行き着くのか。声の主の正体とは?

iquest_03

このようなオープニングと共に始まる本作の基本的な内容は、ストーリーに沿って様々な四択クイズバトルに挑んでいくというものである。本編はステージクリア方式、ワールドマップ画面で探査する遺跡ことクイズを選択・決定し、会話イベントを挟んだ後、遺跡を守護する者とのクイズ形式の戦闘に臨むという流れで進行する。

iquest_04

最終的に正解を重ね、相手の体力をゼロにすれば勝利。逆に不正解を重ね、こちら側の体力がゼロになってしまうと敗北だ。画面の構図、勝敗の仕組みからして明らかだが、ロールプレイングゲーム(RPG)の戦闘シーンをモチーフとしており、さながら”クイズバトルRPG”とも言える独特な作りになっている。実際に正解や不正解の度、主人公の少年と相手の守護者が攻撃行動を実施する演出(アニメーション)が差し込まれるので、非常にそれっぽい。

しかし、成長要素(レベル、経験値)は皆無。
基本的には終始、クイズの攻略に徹する直球の構成だ。

iquest_05

ただ、ステージごとにクイズバトルをアシストする「アシスタント」を付けるか、付けないかを選択する特徴的なシステムがある。アシスタントを付けることで、特定ジャンルの問題で間違いとなる選択肢を1つ教えてくれるほか、不正解だった時のダメージの無効化、連続正解した時に追加攻撃を実施するなど、様々な恩恵を得られるのだ。

iquest_06

序盤はステージごとにアシスタントが固定されているが、ゲームが進むと「アシスタントセレクト」が解禁され、バトル本番前に誰を連れていくかを選べるようになる。アシスタントも、序盤のメンバーだけではない。途中から新メンバーも加わり、それに応じて多彩なアシストが得られるようになっていく。

iquest_07

もちろん、誰も選ばずの単独勝負に挑んでもいい。ただ、中盤以降になると複数のジャンルを複合したクイズが基本になるほか、相手となるキャラクターの体力も上昇するので、厳しい展開になるのは避けられない。自らの力(知識)を信じるか、或いは仲間と共に乗り越えるか。このような”パーティ制度”に着想を得たシステムを実装、並びにゲームバランスの工夫が凝らされており、シンプルな四択クイズバトルでありながらも、RPGを遊んでいるかのような手応えが得られる。

iquest_08

基本こそ方向キーで正解となる選択肢を選んでいくことに終始する、紛うことなきクイズだが、RPGの影がチラつく。バトル前の登場人物達による会話イベントもテキスト量が豊富、さらには登場人物達も味方、敵を含めて相当な数が登場するので、嫌でもRPG、或いはアドベンチャーゲーム(ノベルゲーム)の気配と匂いを感知してしまうだろう。

そんな異様な凝り具合が光る作品に完成されている。
そして、本作の売りに関しても、その凝り具合に集約される。

ボリューム、グラフィック面における突き抜けた”凝り具合”

厳密には本編のボリューム、登場人物達とその世界観、それらを彩るグラフィックだ。

iquest_09

ボリュームに関してはストーリーとも関連するのだが、最初の印象とは裏腹なほど盛り沢山な内容になっている。ちょっとだけネタバレすると、実は本作、二部構成。序盤は主人公の少年の出自を巡るエピソードが展開され、中盤に差し掛かる辺りで、一連の出来事に大体の決着が着く。そして、その先からは第二部……バトル漫画チックなエピソードが繰り広げられていくのだ。先に触れた新メンバーの加入もこのタイミングに実施される。そして、ここから先はクイズバトルも、その前に展開される会話イベントも濃いものへと一変するのだ。

ストーリーの題材は率直な所、使い古されたもので、特段、衝撃的とまでは言えないのだが、適度にボリューム感のあるステージごとの会話劇、舞台と登場人物の豊富さと詳細な設定など、丁寧に作り込まれており、安心して楽しめる面白さがある。

iquest_010

何よりも登場人物の豊富さは圧巻だ。主人公とヒロインの「テクシー」以外にも、実に数十人に渡る仲間、そして敵側のキャラクターが登場し、ストーリーを彩る。しかも、その全てがストーリーイベント、クイズバトル用のグラフィックを持ち、バトル中には攻撃、ダメージ、アシストと言った場面で豊富なアクションをお披露目する。おまけに少年に至っては、ステージごとに杖を使った攻撃も変わる。先の第二部になると、武器までもが変わって、バトル中の立ち姿、攻撃アクションもそれに応じた独自のものになるのだ。

iquest_011

単刀直入に言って、凝り具合が突き抜けている。しかも、ここまでのスクリーンショットを見れば分かるが、全てドット絵だ。数十人に渡るキャラクター達に専用のデザインとグラフィックを二種類ずつ用意し、戦闘シーンごとに独自の動きを加えるなど、どれほどの労力を費やして作り上げたのかが嫌でも想像できるだろう。おまけに登場人物達は全て動物の擬人化キャラクター。いずれも可愛らしくデザインされていて、この種のキャラクターを好むいわゆる”ケモナー”であれば垂涎必至。モチーフにしている動物も多彩で、よくここまで揃えましたね、と感心してしまうほどだ。

地味ながら、ステージごとの背景も使い回しは皆無。そんな場所が10以上もあるボリューム感。何故、本作の売りを凝り具合と言ったのか、その理由が嫌でも察せるだろう。ある種、執念と職人魂が作り出したとも言うべき密度。規格外の仕上がりになっているのだ。

iquest_012

なので、本作はストーリー、ビジュアル目的でプレイしても十分過ぎるぐらい、おなかいっぱいになれる。もちろん、肝心のゲーム部分たるクイズ部分も先のアシストシステムはもちろんのこと、ストーリーに応じて新たなアシスト解禁、敵の強化、題材を複合した問題を出す適切なレベルデザインで魅せる。アシスト有り、無しで難易度の違いを楽しむと言った、周回プレイ時のお楽しみが用意されているのも特筆すべきところだ。

難易度に若干の疑問点もあれど、遊び応え抜群の力作クイズゲーム

iquest_013

ただ、クイズの難易度には課題が多い。特に出題のパターンが全ステージランダムで統一されているのは、少し乱暴すぎる。そのため、分からない問題が連続すると敗北一直線、場合によっては形勢逆転に繋がるなど、運に左右される。正直な所、ここはもう少し調整の必要があったように思う。制作ツールの仕組み上、限界があった可能性もあるが、せめて序盤は問題の出題方式を固定パターンにし、再挑戦を繰り返せばいずれクリアできるバランスにする配慮が欲しかったところだ。実際、序盤はアシストのバリエーションが乏しく、その難点が強調されてしまっている。ランダムは、アシストのバリエーションが増える中盤以降が望ましかっただろう。増えて以降は運に左右されるケースも減り、バランスがよくなっているだけに、余計にその甘さが惜しまれる。

iquest_014

また、アシストも中盤から数が増えるものの、連続攻撃と不正解時のカウンターが強力で、間違いの選択肢を打ち消すアシストがほぼ空気になるのも気がかりだ。アシスタントを三人選べれば、多少は存在感が出たと思うだけに惜しい。

さらに不正解パターンを連続で引き、もう敗北濃厚な状況の途中でポーズメニューを開いてやり直せないのも不便。敗北後のゲームオーバーで「今すぐリトライ」を選ぶ以外にない。これも用意すべきだった。確かにゲームオーバーになってリトライすればいいが、そこに至るまでに攻撃の演出が挟まるので、地味に時間がかかる。そんなことを可能にすれば、作業的なバランスになりかねない側面もあるだけに、避けたのかもしれないが、運に左右されやすいバランスを考えると、入れるのは適切だったように思う。それに、リトライするのに負けなければいけないのは心情的にも嫌な気持ちになる。できれば、思い切って欲しかった限りだ。攻撃の演出が冗長でないのがせめてもの救いだが。

iquest_015

最後の最後で厳しいことを連ねてしまったが、出来の悪いゲームではないことは声高に主張したい。むしろ、力作と言うに相応しい仕上がりだ。RPGっぽさを味わえるクイズバトル、個性豊かなケモノキャラクター達が織り成す王道味の強いストーリー、そして盛り沢山なボリュームと、遊び応えは抜群。問題ジャンルの幅も国語、数学、理科などの基礎教養から芸術、雑学まで幅広く、少しマニアックなものも含まれていて、新たな知恵を授けてくれる。「ピクセルアート部門」の金賞に輝いたなりのグラフィックも素晴らしく、8ビットスタイルのピコピコ音楽も合わせて懐かしい気持ちにさせてくれる。

iquest_016

難易度的に少し根気が試されはするが、遊び応えは抜群。キャラクターのデザイン、グラフィックのテイストに少しでも惹かれたのなら、プレイしてみるだけの意義は十分にある一本だ。クイズという名の戦いに身を投じ、謎多き少年の使命を見届けよう。それと合わせて、普段知り得ない分野の知識もいただいちゃいましょう。

[基本情報]
タイトル:『IQuest』
制作者: KOPAR
クリア時間: 2~4時間
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料

ダウンロードはこちらから
※ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/19229


Viewing all articles
Browse latest Browse all 742

Trending Articles