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Channel: フリーゲーム –もぐらゲームス
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揺るぎなき睡眠と伝説のRPG『眠れる勇者は目覚めない』ベッドは聖剣より強し。

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勇者。
それは勇敢なる者、そのような人物へと捧げられる称号。
今後偉業を成し遂げようとする期待を込め、称されることもある。
特にファンタジー世界の勇者と言えば、その印象が強い。

また、ファンタジー世界の勇者には”お約束”がある。
主要武器は剣、女神や精霊の加護による常人離れした力、集う仲間達、魔王討伐の最終目標などのことだ。現実世界から異世界へと呼び出された人物が勇者として祀り称えられることもそのひとつとして挙げられる。

さらに眠りからの目覚め。勇者の冒険は、眠りから始まることが多い。その最中に囚われの姫君、女神の声が脳内へと直接響き渡り、自らに課せられた運命が伝えられる。それらを全て聞き終えた後、勇者は眠りから覚め、後に伝説と語り継がれていくことになる冒険への第一歩を踏み出すのだ。

そしてここにもひとり、大いなる父神に選ばれし”伝説の勇者”が「新しき知恵の女神」からの声を眠りながら受け取っていた。
女神は語る。人間界に未知なる脅威が迫っている。神に背き歪んだ進化を遂げた「目覚めし者」から人間たちと世界を救うため、目覚めなさい……と。

かくして、勇者は人間界を救うため、眠りから覚め……

……ずに寝続けた。
そう!『眠れる勇者は目覚めない』のであった!

伝説の勇者が寝たまま大暴れ!だが、主人公は騎士!

衝撃のズッコケ展開だが、これより紹介するゲームの紛うことなきオープニングであると同時に作品名である。その名の通りに目覚めない勇者の伝説を描く作品。題して『眠れる勇者は目覚めない』。大事なことなので2回言わせてもらった。

何故かと言えば、本当に勇者は目覚めないからである。
ベッドで寝たまま、グースカし続けるだけなのである。
それなのに勇者は伝説となるのである。

「どういうこっちゃ!」と言われても、そういう設定なのだから仕方がない!勇者が眠りから覚めずして伝説など紡がれるものかとも言いたくなるかもしれないが、紡がれるものは紡がれる!お構いなしに紡がれる!だって勇者なのだから!
それに彼は主人公ではないのだから!

本作の主人公は下級騎士「オキテル=ハッキリトー」
なんだか色々察せそうな名前だが、大人の視点でそういうものとご理解いただきたい。

改めてストーリーを掘り下げると、舞台となるのは騎士「グロリア」の伝説が残る王国。
勇者じゃなくて騎士が伝説になっている国だ。……あれ?

グロリアは自国を護るため、単身で敵の大軍へと突撃し、全てを跳ね飛ばした獅子奮迅の活躍によって騎士の偉業を見せつけた人物。しかし、その戦闘の最中に行方不明となってしまい、20年の月日が過ぎ去った。

あれ以降、彼が残した「グロリア騎士団」とその騎士たちは、自らの栄誉と保身を望む腐敗した存在に成り下がってしまった。そんな中、数名の騎士が何者かに襲撃される事件が発生。その数日前、「目覚めし者」と名乗る集団が宣戦布告と思しき封書を送っており、彼らが犯人と判断した領主「シエスタ」はアジトとされる場所へ数名の騎士を派遣。だが、全員返り討ちにされてしまった。

これに対し、シエスタは選りすぐりの騎士を派遣することを決定し、オキテルと上級騎士「レム=スイーミン」が抜擢された。かくして2人の騎士は「目覚めし者」を捕らえるため、アジトへと向かうのである。

このような展開と共に本筋が描かれていく。
勇者はどこに……だが、彼は全く別の神聖なる地にいる。そこで彼はベッドで寝ながら女神の声を聴き続けていたのである。だが、どんなに声をかけても目覚める気配がないので……

女神は侍女「ジュリエッタ」と共に寝たままの状態で人間界へと強引に降り立たせた。そして、勇者はその用いる力をベッドで寝たまま使役し、「目覚めし者」と戦う騎士2人を助けていくことになる。

もう何がなんだかだが、これこそ本作の魅力。『眠れる勇者は目覚めない』のである。

そして終始、着地点行方不明な展開が続いてはプレイヤーのみならず、主人公の騎士2人、敵の「目覚めし者」たちをも翻弄し続けるのである。頭が痛くなってきたかもしれないが、そういうものなのだ。

というかそもそも、本作はどんなゲームだ。
ズバリ「揺るぎなき睡眠と伝説のRPG」である。
ストーリー重視型RPGとも言う。

ヌルめのRPG。だが、そうしたなりにストーリーは本気(マジ)

基本的に拠点と個別のエリアマップを交互に移動し、探索や戦闘をこなしながらストーリーを進めていく。戦闘はマップ上を徘徊する敵のシンボルに接触すると発生。敏捷性の高いキャラクターから順に行動する、伝統的なコマンド選択式になっている。

経験値が一定量に達すればキャラクターがレベルアップ。それとは別に得られる「SP」なるポイントを消費して剣技などの「スキル」を獲得する「スキルツリー」もあり、プレイヤー好みの強化が図れる設計だ。

以上、システム全般の解説である。
率直に申して、特徴的なものはない。愚直なまでに王道一直線。
極め付けに難易度も低い。驚くほど低い。
なぜか?勇者が強すぎるからだ。

特にボス戦、敵の「目覚めし者」のメンバーとの戦いは勇者の独壇場。プレイヤーのやることは彼が大暴れできる環境を作り出すこと、と言わんばかりの強制負けイベントラッシュなのだ。

さすがに雑魚敵との戦いだと、勇者以外が全滅すればゲームオーバーになるが、小まめな育成と強い武器の装備を心がければ、まず窮地に陥ることはない。度合いによっては力押しも通る。ゲーム開始時の初期装備でも、レベルによっては終盤の敵などとも張り合えてしまう。それぐらいヌルヌルなのだ。

反面、そうしたなりにストーリーの出来は非常に良い。前述の紹介からして、ネタてんこ盛りだからと言われればイエスだ。現に本作は”バカゲー”である。だって、ベッドで寝たままの勇者が大暴れするんですよ?バカゲーと言わずして何と言うのです!

しかしこのストーリー、なかなかどうしてよく出来ている。またしても、大事なことなので2回言わせていただいた。
確かに勇者こそツッコミの塊だが、作中の舞台となる国の情勢は全く穏やかじゃない。民たちに強烈な騎士不信が根付いている。「目覚めし者」たちもそんな彼らへの反逆を目的にしている。絶対悪ではないのだ。むしろ、主人公たちが属する騎士団の方が悪に見えるほどである。

この不穏な構図が少しずつ顕在化していき、中盤以降はまさかのシリアス展開に突入する。関連して伝説の騎士グロリアの失踪にまつわる謎、「目覚めし者」との意外な接点も明らかになって、そのまま思いもしない決戦を迎えるのだ。

その模様は見てのお楽しみだが、誰もが「最初の頃のツッコミ祭りはどこへ……」となること確実。もちろん、勇者こと「ネテール=グッスリトー」もそこに”目覚めないまま”介入するのだが、もはやベッドで戦うことなどどうでもいい空気になると同時に、騎士2人の心情に影響を与える存在になっていく。その存在感たるや、紛れもなく勇者。素晴らしい活躍を見せてくれるのだ。寝っぱなしだけど。

設定が異様すぎるだけに、どうしてもそこがフォーカスされてしまうが、ストーリー重視型RPGとしてはこれ以上なく正しい出来。全体の構成も素晴らしく、ワンパターンにならないための工夫が凝らされているのも凄い。さらにヌルヌルのバランスに隠された罠も見逃せない。これに関しては終盤をご覧いただければと思う。ストーリー重視だけど、ゲーム部分の手を抜いている訳じゃないことを実感させられるはずだ。

とは言え、バカゲーと称される側面も持つ作品。
エンディングのオチには多分、頭が痛くなるかもしれない。

そして、眠れる勇者は伝説となる

また、ストーリーには気になる箇所や好みの分かれる部分も。特に負けイベントが多いことは、裏を返せば強敵を撃ち倒した快感を味わえないことを意味するため、人によっては不快感を覚えるかもしれない。そこを勇者が強烈にフォローしてくれるが、完全自動戦闘のため、プレイヤー側はただその様子を眺めているだけ。

その自動戦闘及びツッコミ劇も冗長気味。ベッドで暴れる勇者の姿を存分見せる意図があるにしても、結構長々と続く関係でセーブなどの小休止も挟めず、どうしても「早くしてくれないか……」となってしまう。できればもう少し短く、特にダメージ演出をテンポよくして欲しかったところだ。

ほかでは終盤のエリアマップに育成の怠り、アイテムの準備不足、セーブ実施のタイミング次第で詰みかねないイベントがあるのも気になるところ。余程、戦闘を無視し続けない限りは回避できるが、万が一のため道中に雑魚敵を出し、レベルアップの機会を設けても良かったのではと思ってしまった。エリアマップに関しては、「自動ダッシュ」の設定がONでも強制的にOFFになってしまう現象も気がかりだ。(ただ、ダッシュ移動自体は該当するボタンを押せば可能である)

正直、RPGとしては物足りなさと歯がゆさが滲み出る出来なのは否定しない。だが、そこを犠牲にしたなりにストーリーは秀逸で、異様な設定とは裏腹に素晴らしい余韻が残る内容になっている。

そのことから、RPG風アドベンチャーゲームとも言える本作。異様な設定に少しでも惹かれたのなら、ぜひプレイしてみていただきたい衝撃作である。ベッドで寝たまま、起きようともしない勇者が紡ぎ出す前代未聞な伝説の数々、そして正義と正義がぶつかり合うシリアスな展開の数々に括目せよ。
そしてアナタは「揺るぎなき睡眠と伝説のRPG」の意味を知る。

なお、件のジャンル名は筆者が勝手に付けたものなのであしからず。

[基本情報]
タイトル:『眠れる勇者は目覚めない』
作者:リョウ=カルス
クリア時間:4~5時間
対応OS:Windows
価格:無料

※ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/21030


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