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Channel: フリーゲーム –もぐらゲームス
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未来は時に地獄へ通じる。その真理を暗黒クイズゲーム『+と+のわかれみち』で私は思い知らされたのだ。

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「人の世に道は一つということはない。道は百も千も万もある。」(坂本龍馬)

人生には大小問わず、様々な「わかれみち」が待ち受ける。
そして、その時に取った選択次第で、未来は数多に分岐する。

だが、その先の未来というものは簡単に予測できたものではない。最良の選択としての決断が不幸を招くこともあれば、逆の決断が幸運をもたらす「番狂わせ」が生じる可能性は常に残り続ける。
「人間万事塞翁が馬」、「一寸先は闇」などのことわざが象徴する通り、未来は簡単に予測できるものではない。どうなるか分かるのは、選んだ道を進んだ時のみ。

そんな真理を筆者は『+と+のわかれみち』を通し、思い知らされたのである。

これは選択と決断の数々を体験し、乗り越えるゲーム

『+と+のわかれみち』とは、その名の通りに「わかれみち」という名の選択と決断の数々を体験し、乗り越えていくゲーム。
より分かりやすい表現にまとめれば”2択クイズ”である。

このゲームにおいて、プレイヤーは「+」にまつわる2択問題に挑戦する。操作は至極単純。キーボードの方向キー左右で2つの選択肢のどちらかを選び、Zキー、もしくはスペース、Enterキーで決定し、回答する。

正しければ正解判定が、逆なら不正解判定が出る。また、問題ごとに制限時間も設定されており、0になるまでの間、回答できなかった場合は強制的に不正解となる。

これらの問題を繰り返し、ステージクリアを目指すというのが基本的な流れだ。なお、ステージ総数は4つ。ステージごとの問題総数は全部で10問だ。

加えて、ステージクリアの条件は10問全てを一通りやり切ること。言い方を変えれば、問題の成否は問われない。仮に全問不正解でもステージクリア扱いになるという、この世の優しさと愛しさ全てを凝縮した超良心的設計となっている。

そして、この世のありとあらゆる悪意と不正を絶対に許さない。問題回答前は本作の制作に用いられた「WOLF RPGエディター」特有の仕様で、Altキー、F10キーに割り当てられた一時停止機能が使用禁止になる。もし、一度でも押せば強制不正解という名の天誅が執行。マウス操作も問題回答前は無効で、画面中央部に透明化の上で固定される。「あ、間違えちった。閉じるボタン押して最初からやり直そw」なんて砂糖菓子並の甘っちょろい逃げも腕挫十字固のごとく封じられる。極め付けに「WOLF RPGエディター」特有のスクリーンショット機能も問題回答前は一切使えなくなってしまう仕様。問題を後から見返すことも認められぬのである。

なのになぜ、回答前のスクリーンショットが紛れ込んでいるのか?まあ、その辺は気にしないでいただきたい。一応、窓の先に見えるかもしれない杜を調べることによって、紛れ込んでいる事情を明らかにするサムシングが分かるかもしれないとだけ言っておこう。

そんな具合に本作はひたすら2択クイズに挑んでは回答することに終始する内容である。どこに「人間万事塞翁が馬」や「一寸先は闇」の真理があるねんと、この段階では物申し山の如しである。

だが、きっちりバッチリあるのだ。
本作屈指の特徴にして見所、ストーリーに。

そのストーリーにはこの世の真理と地獄が潜んでいる

突然だが、本作にはれっきとしたストーリーが存在。各ステージの10問を解き終えた後、それに関するイベントが始まるようになっている。そう、本作は実の所、2択クイズであると同時にアドベンチャーゲーム、またの言い方でノベルゲームでもあったのだ。

そして、ここで描かれるストーリーに本作の真髄が込められている。

だが、その詳しい内容に言及するのは全くもって不可能だ。
オープニングに当たるあらすじすら、触れることはできない。

そもそも、なぜ今になるまでストーリーについて触れなかったのか?その時点で察していただきたい。そういう訳である。自らの眼(まなこ)で確かめることにより、初めてその意味を思い知らされる衝撃的な内容になっているのだ。プレイする前に抱いていた先入観の数々が音を立てて崩れ落ち、精神面を深き闇へと誘うかの如く。

なるべく内容に触れず、見所および評価点を挙げるならば、作品名とクイズが絶妙に関連付いた展開と構成だ。どうして「+」にまつわる問題が続々と出題されていくのか。ステージが進んでも、その方向性に変化が生じないのか。なぜ、こんなにも学習要素が濃いのか。全ての理由がストーリーと綺麗に関連付けられている。見れば、この全ての理由(わけ)が腑に落ちると同時に「+」に込められた意味の数々にハッとさせられるだろう。

また、超絶怒涛の急展開の数々も見逃せない。ここがまさしく「人間万事塞翁が馬」、「一寸先は闇」を象徴する勘所だ。その怒涛の事態の数々には、一連のことわざが脳裏を過ぎ、「わかれみち」の先は幸せと不幸に分かれているのではなく、時にどちらの道も地獄にしか繋がっていない真の絶望を知るだろう。
最終的に訪れる結末と衝撃の「わかれみち」、そこから先の展開にも注目だ。例によって詳しくは言えないが、闇の極地を見てしまうかもしれない。

なお、この何ひとつ言えないストーリーだが、実はどの範囲まで見られるかは全10問の「正答率」によって確定する。基本的に50%以下だとちょっとだけしか見れず、50%以上でその続きが見れ、80%以上で全容が明かされる。そのことから最初から80%以上の「正答率」を目指してプレイすればいい、と思うかもしれないが、実は全く持って推奨されない。50%以下、50%以上、80%以上の3周プレイが推奨されるのである。

それを心がけることによって、この闇と絶望と試練と苦痛と地獄をグデグデに煮詰めたストーリーを3割美味しく堪能できる。3周という時点で若干、面倒くさいと思うかもしれないが、前述の通りステージ総数は4つ。1周に要する時間も大体10~15分程度なので、意外にテンポよく楽しめる設計だ。こう言った周回のしやすさが、ストーリーの何が見所であり、醍醐味であるかの伏線にもなっている。これに準じるか、無視するかは基本的にプレイヤー次第だが、筆者は準じることを強くお薦めしたい。そうすることによって、「わかれみち」の名に込められた真理をよりダイレクトかつ、モーレツに味わえる。そうすることで、きっと本作がより一層、記憶に残る作品として脳内に刻み込まれるだろう。

そう、唯一無二の暗黒クイズゲームとして。

改めて繰り返そう。本作の見所はストーリーである。

ただ、念のためこれからプレイする方に向けて注意喚起しておきたい。ストーリーの闇成分および鬱要素は想像を絶する濃さだ。強烈な不快感を抱かせる表現が数多混じっているので、挑むに当たっては心の準備を済ませておいて欲しい。その辺もストーリーの衝撃性を引き立てる要素になっているのだが、あえてこれだけは明かして警告させていただく。

道の先には地獄と闇しかない真理がある。

ストーリーに焦点を当てたが、クイズ部分も「+」にちなんだ問題中心で編成したこだわりと発想の面白さが光る仕上がりだ。これまた詳しい言及は避けるが、その活用法には「なるほど!」と、思わず納得してしまうだろう。
また、ステージ3以降になると、いわゆる「引っ掛け」が出てくるなど、単調さを防ぐ工夫が凝らされているのも秀逸だ。中でも最終ステージ4では、いろんな意味で翻弄されると同時に、起伏のある構成を心掛けたこだわりが生んだ邪鬼を垣間見るだろう。

また、本編を特定条件達成でクリアすると「チャレンジモード」なるクイズ特化のゲームモードが解禁される。これは純粋に己の実力と判断力を試す内容で、自分の力に興味があるならばぜひ、挑んでいただきたい。特に3つある難易度の内の最高難易度「本気」は難関中の難関。これを全問正解できた時が真の意味でのゲームクリアになるので、本編だけでは物足りないと感じたら、思いきって飛び込んでみていただきたい。
念のためだが、このモードの闇成分はゼロだ。ご安心のほどを。

本編のボリュームだけを見れば一瞬で、若干一発ネタ臭の強い作品の一面はある。また、制限時間はどのステージも後半の問題になる度に少なくなっていくのだが、最後の方は過度に短くしすぎているきらいがあった。出題内容とのバランス設定上の不釣り合いが生じているのが大きい。前述の「正答率」の仕様から、意図的な可能性もあるが、あと1~2秒猶予を持たせてよかったように思える。少しだけ理不尽さが出ていたのが惜しい限りだ。

ただ、そんな理不尽さもストーリーを思えばあって不思議でない要素になっていると思えるあたり、(いい意味で)ズルい。同時に怪作とも表せる。遊びそのものは単純なので、普段ゲームを遊ばない人にも優しい親切設計。しかしてその中身は、この世の闇と未来と地獄が詰まった恐るべき内容。僅かでも関心を抱いたのなら、ぜひプレイいただきたい1本だ。

そして、思い知ろう。「わかれみち」の先は何が待つか分からないという真理を。

[基本情報]
タイトル:『+と+のわかれみち』
作者:すたーあいす*
クリア時間:10分~1時間
対応OS:Windows
価格:無料

※ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/25203


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