とっても穏やかな国「ペイナイト」。
しかし最近、謎の有害物質「こげ」が発生。
穏やかな暮らしは絶滅危惧種になってしまいました。
「こげ」を体内に取り込みますと、頭痛・吐き気・めまい・咳・発熱……などなど、様々な体調不良に悩まされるハメになっちゃいます。このままですと、健康診断が心配でなりません。百獣の王感覚で心配ないさなんて叫んでも意味ありません。
どうにかして状況を変えなければ。そうしてできたのが「Keshi計画」。
「消し族」と呼ばれる色々なものを消してしまう種族の力を集め、国内のあらゆるものを消しちゃえば、ついでに「こげ」の原因も消えるはずじゃいよっしゃいという、最高にアメイジングでクールな計画です。
そして、実行役の若手No.1ケシニスト「安野 花織(あんの けしき)」こと「けしきちゃん」以外の全国民が離島に一時避難して、計画は実行されました。当初の予定では安全確認の後、芸術活動が得意な「筆族」に国を再建してもらえば一件落着のはずでした。
しかし、どうしたことでしょう。「こげ」はまだ発生します。
これじゃ、みんなを呼び戻すこともできません。
健康診断の結果も大変なことになっちゃいます。
そんな訳で、けしきちゃんは「こげ」の原因を探す旅に出たのです。
つまるところ、計画は失敗したんですね、詰んだのですねと追い討ちしたくなるあらすじですが、大丈夫です。問題はないです。まだ何も終わっちゃいません。
この作品『かいてはけして』は、ここからが本番となるのでございます。
ちょっぴりアクション要素もある、お気楽アドベンチャーゲーム
ところで『かいてはけして』とは、どんな作品なのでしょう。
前後しましたが、改めてご説明いたします。
2021年1月に公開されましたWindows PC用フリーのゲームです。
『RPGツクールMZ』で作られています。
ダウンロードはフリーゲーム配信サイトの「ふりーむ!」様からできます。
ジャンルは一応、アドベンチャーゲームということになっています。
どうして”一応”なのかと申しますと、アクションゲームの要素も持っているからです。
ゲームの進め方を交えつつ、紹介してまいりましょう。
このゲームで、プレイヤーの皆様は主人公の「けしきちゃん」を操作します。けしきちゃんは色々なものを消しちゃう「消し族」の女の子です。血液型はAB型です。この記事を書いていらっしゃいますワタクシめもAB型です。
……って、そんなのどうでもいいですね。失礼しました。
ともあれ、けしきちゃんの目的は「こげ」を消すこと。
チェック柄ですが、真っ白という設定の大地で動き回っている「こげ」をひとつ残らず消しちゃえばいいのです。消し方はとっても簡単。けしきちゃんをキーボードの方向キーで動かし、こげに近づいてエンターキーを押すだけ。これだけあらビックリ、「こげ」はあとかたもなく消えちゃいます。
この「こげ」を全部消し終えますと「ここの「こげ」はけしました、わーい」とおっきく表示され、クリアになります。このようにして舞台となる「ペイナイト」の国のあちこちで発生している「こげ」を消していくのです。とっても簡単ですね。
けど、けしきちゃんは消すことしかできませんので、ペイナイトの大地はずっと真っ白なままです。こんな状態ではどこへ行けばいいかも分からず、ウロウロしちゃいます。
ああ、ついに限界が来ちゃいました。
お腹がすいちゃったみたいです。
「腹が減っては戦ができぬ」とは言ったものですね。
そんなけしきちゃんの元に、「筆族」の「重井 笑学(おもい えがく)」こと「えがくくん」登場!えがくくんが持ってきたパンによって、けしきちゃんはあざやかに復活しました。また、えがくくんは「魔法の筆」とペイナイトの資料を持っていました。これがあれば、大地も復元できちゃうでしょう、ということで。
大地もドバっとコッテリ復活です。そしてここから先はえがくくんと共に、「こげ」を消しながら真っ白な大地を復活させていく展開へと移っていきます。ここからが本当の本番。「こげ」を消すこと、ペイナイトの復活が一緒に進んでいくのです。
ちょっとだけストーリーも交えながらとなりましたが、ゲームの流れや「こげ」を消すイベントについて紹介いたしました。
このように移動の要素があるアドベンチャーゲームとなっています。そして、先ほど申しましたアクションゲームの要素というのは「こげ」を消すイベントのことなのです。
ただ、「こげ」にさわるとダメージを受けたり、体力がすっからかんになってしまうとゲームオーバー、みたいなのはありません。けしきちゃんのアクションも移動とこげ消しの2つだけなので、苦手な人にもとっつきやすいです。うれしいですね。
ですけれど、このイベントではけしきちゃんが(いわゆる)爆走モードになりますため、「こげ」に近づく時はうまく制御しなくてはなりません。「こげ」にも色んな種類がありまして、それぞれ消し方にも違いがあります。なので、簡単と言えば簡単なのですが、ほんのりテクニックが求められます。ゲームオーバーが無いですけど、注意が必要なのです。心してかかりましょう。
また、「こげ」を消した後に蘇った大地では、置き物を調べたり、えがくくんに話しかけたり、次の真っ白な大地への移動ができます。中継地点とも言えますね。
このように『かいてはけして』では、「こげ消し⇒大地復活⇒探索しながら次の真っ白な大地へ」の流れを基本に進んでいきます。アドベンチャーゲームとしては、いわゆる”探索型”に近いものと言った感じですね。
肩の力を抜きながら”ゆるゆる”ストーリーを味わいましょう
そんなこの『かいてはけして』の魅力、それは”ゆるゆる”です。
ゲームもストーリーも演出も、みんな”ゆるゆる”です。
ここまでのスクリーンショットからも、その”ゆるゆる”はよく感じ取れるはずです。おかげで始まりから最後まで、肩の力を抜いたまま、のんびりゆったり進めてイケイケできちゃう作りになっています。
ゲームオーバーもありませんから、尚更ですね。
特に”ゆるゆる”なのはストーリーです。人間に悪影響を及ぼす有害な物質がモクモクし出して大変なことになり、その対抗策のために街から自然まで、なんにもなくなっちゃった世界を復活させていく。設定だけなら、ものすごく深刻です。主人公のけしきちゃんがそのために孤軍奮闘するのも、なんだか大変そうで心もペキっていっちゃいそうな感じです。
けど、内容そのものは”ゆるゆる”です。暗く、重い気持ちになっちゃうような展開はほとんどなく、ふわふわしたノリで進んでいきます。けしきちゃんとえがくくんのやり取りは、真面目なノリですけどね。
しかし、パンに対してはこんな反応をしちゃいますし。
えがくくんが仲間になった時には踊っちゃいますし。
えがくくんが大地を蘇らせるときの演出もこんなにユルいですし。
極め付けに謎の生命体も出てきちゃいます。可愛いですね。
もちろん、ちゃんとプレイヤーの皆様の興味を惹く展開も目白押しです。まあ、突然の謎の生命体くん登場の時点でお察しかもしれません。「こげ」を消していくにつれ、生命体くんは2人の前に現れては意味深な行動を取っていきます。また、生命体くんが現れる場所には決まって”あるもの”が。一体、彼は何者なのか。そして、どうして2人の前に現れるのか。
全ては終盤に近づくにつれ、明らかになっていきますが、そのあまりに健気で優しさいっぱいの真相にホッコリしちゃうでしょう。また、ここまで辿り着く間に通過してきた、チェック柄なのに真っ白となっている大地の意外な事実にも驚かされるはず。そこまで辿り着く頃になれば、「だからこういうデザインだったのか!」と、納得するかもしれません。
突然の急展開もないため、若干退屈に感じたりもするかもしれませんが、最後までやり通せばますます、この世界観とキャラクターたちが好きになっちゃうはずです。彼らのさらなる活躍も見たくなるかもしれません。
この時点で少しでも興味を抱いたのであれば、ぜひともダウンロードして遊んでみちゃいましょう。肩の力を抜いたまま遊べることの真価と凄さを知っちゃうはずでしょう。
逆にゲームオーバーが無い通り、やり応えとか難しさを求めちゃうと肩透かしですので、ご注意ください。ただ、「こげ」を消すパートに関しては、なかなか侮りがたい遊び心地が光る仕上がりです。特に脅威の爆速移動を決めるけしきちゃんの思い通りに動かせそうで動かせないもどかしさには、取り組んでいる中で「上手く動かしてやる!動かしてやる!」と、ムキになって熱中してしまうはずです。人によっては「俺がけしきちゃんだ!」と投影しちゃうかもしれません。ムキになり過ぎないように気を付けましょう。
また、できることは少ないのに、不思議とアクションゲームを遊んでいるかのような感覚が味わえるのも見所。ゲームが進む度に特殊な「こげ」が現れ、展開に変化が生じるのもジャンルのツボを押さえている感じです。さすがに本家本所のアクションゲーム並のやり応え、入り組み具合はありませんが、僅かとは言え、大事な所は外していない作りには「な~るほど」と唸っちゃうでしょう。
”ゆるゆる”でも、決めるところはちゃんと決めている。
こう言ったところも、この『かいてはけして』の魅力を深めているのです。
これが本物、ゆるゆるアドベンチャー
ほかにボリュームはメインのストーリーを進めることに絞り込めば、大よそ1時間以内に終わっちゃいます。しかし、ストーリーとは別の寄り道、「パンキット」なる隠しアイテム探しもやりながらなら”ニュニュ”っと伸びます。
これから『かいてはけして』を遊ぶ皆様には、ぜひ「パンキット」も探しながらストーリーを進めていくことをおすすめしておきたいです。これを集めることにより、けしきちゃんとえがくくんの2人について、より深く知ることができますし、舞台となる世界についても詳しくなれちゃいます。また、「パンキット」を手に入れれば色んなパンが作られ、すぐに2人が食べ始めるのですが、その反応もとても楽しい。作った時に挟まれるイベントデモも可愛らしい感じに仕上がっていますので、そこにもご注目ですよ。
もう、ここまでのスクリーンショットからも明らかでしょうけど、グラフィックもすんごく”ゆるゆる”です。音楽もこの雰囲気に適した楽曲がチョイスされていますので、遊んでいる時は思わず「ぽわ~」としてしまうでしょう。
ストーリーにゲームのところまで、ものすごくこだわって”ゆるゆる”にまとめている『かいてはけして』。「こげ」を消すパートはキーボード操作だと少しモヤっとしやすい手触りだったり、復活させた大地でできることは「パンキット」の発見とえがくくんとの僅かな雑談だけと、首が傾いちゃう部分もあります。
けど、何かすんごく激しく、エネルギーを消耗するゲームを遊んだ後の小休止や心の栄養を補給したい時には打ってつけです。皆様もけしきちゃんとえがくくんの”かいてはけす”旅をのんびりまったり楽しんでみましょう。
[基本情報]
タイトル:『かいてはけして』
作者:和と仁
クリア時間:1時間~1時間半
対応プラットフォーム:Windows
価格:無料
※ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/24735