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Channel: フリーゲーム –もぐらゲームス
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ゲームプレイと演出のシンクロによる圧倒的トリップ感!”のーみそコネない系”爽快シューティング『ZAKESTA』

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2020年10月の「制作途中フリーゲーム3選」にて紹介したタイトルのひとつ『ZAKESTA』。このほど2021年8月31日に完成版がフリーゲームとして、作者ざきち氏の個人サイト「喜撃屋本舗」にて公開された。

ポップな見た目とは裏腹に熱い展開満載の横スクロールシューティングゲームだった、ざきち氏制作の前作『VASTYNEX』(紹介記事)。その次作としてお披露目された本作は、「のーみそコネない系シューティング」をキャッチコピーに掲げた作品である。

改めて、その詳細なゲーム内容と魅力を紹介していこう。

取っつきやすさと破壊重視の縦スクロールシューティング

基本的なゲームの仕組みは前作に当たる『VASTYNEX』と変わらない。襲い来る敵の軍勢をショット攻撃で撃ち落としながらステージ(エリア)を進み、最後に待ち受けるボスの撃破を目指す、シューティングゲームの王道に則ったものだ。

ただ、今回はスクロール方向が横ではなく、縦になっている。

戦闘スタイルは主要装備のショット、副装備の「サブウエポン」の2種類を使い分けながら敵を迎え撃つ形式。全体攻撃を実施する「ボム」は存在せず、「サブウエポン」の一部種類に近いものが割り当てられた格好となっている。システム的には、これもまたシューティングゲームの王道に則った作りである。

サブウエポンは全6種類。道中に現れる輸送機を破壊した際に落とす、数字の刻まれたアイテムを獲得すると同時に自動で装備される。効果は「1」なら発射時点の自機の位置に巨大レーザーを発射、「2」なら敵や敵弾にダメージを与えるバリアを一定時間展開するなど、数字ごとに異なるものが設定されている。また、本作では自機の移動速度を抑える「低速移動」が可能で、これで動いている時限定でサブウエポンの効果も変わる。「1」なら発射した巨大レーザーが自機の移動に追従、「2」ならダメージ量の増加と展開時間の短縮という具合だ。

さらにサブウエポンは、数字が異なるものでもひとつ取得する毎にレベルが上昇し、性能が強化される。加えて、自機の耐久力も上昇する。本作もシューティングゲームの定番に則り、自機は1回でも敵の攻撃を受けると即撃墜され、残機を1つ失ってしまう。だが、サブウエポンのレベルが1以上あれば撃墜されずダメージ扱いに。代わりにサブウエポンのレベルは1段階下がってしまうのだが、残機は失わず、そのまま攻略を続行できるのだ。

そのため、サブウエポンのレベルの上昇は己の身を守ることと同義。レベルの上限は3までのため、完全無欠な防御力に上げるのは不可能だが、アイテム自体は頻繁に現れるため、立ち回り次第では耐久力を維持し続けるのも夢ではない。このような特徴をサブウエポンは持っていて、武器でもあり盾(もしくは鎧)でもあるというユニークな存在として確立されている。

対照的に主要装備のショットは直線状に発射されるだけの純粋な攻撃特化型だ。ただ、こちらにもレベルの概念はあり、道中に現れる球体のアイテムを獲得していくことで最大5段階まで強化できる。最大レベルになれば攻撃範囲も広くなるので、より効率的に敵の軍勢を撃墜可能。連射もボタン押しっぱなしで可能と手に負担を与えないので、使い勝手も上々だ。サブウエポンほどの個性は無いが、相応に安定感に振り切った作り。これぞシューティングゲームな手触りだ。

他にもエリア最後のボス戦では制限時間が設定され、時間内に倒し切れれば得点(スコア)アップに繋がる「ボーナスアイテム」を沢山獲得できる要素も仕込まれている。道中にもボーナス得点を加算する様々な隠し要素があり、スコアアタックを熱くする試みが成されている。

……と、色々紹介したものの、根っ子は純粋なステージクリア型シューティングゲーム。襲い掛かる敵をひたすら撃ち落とし、障害物を問答無用で壊しまくり、ボスを叩き潰すことに徹するだけの王道中の王道、「シンプル・イズ・ザ・ベスト」な内容だ。

細かいことをあれこれ考えながら遊ぶものではない。取っつきやすさ重視。まさに「のーみそコネない系」通りの作りになっている。

映像、音楽、演出がシンクロし続ける、驚異のトリップ感

そんな本作の魅力は、圧倒的な「トリップ感」にある。厳密には桁違いに爽快感が高い。各エリアの目まぐるしい展開の数々にプレイヤーの気持ちがシンクロし、自然にトリップ状態に陥ってしまう驚異的な気持ちよさと引き込む力に秀でているのである。

その原動力が音楽とステージ構成、演出の3要素である。

紹介が遅れたが、本作の音楽はボーカロイドの「巡音ルカ」による歌唱付きの楽曲を始め、トランス系の楽曲を中心に選ばれている。この時点でもインパクト十分なのだが、本作が優れているのは、その一連の曲のメロディに合わせるかのようにステージ構成を始めとする全てが設計されていることである。

とは言え、それ自体は前作に当たる『VASTYNEX』にも存在したもの。別に目新しい試みではない。ただ、今回は全編に渡って楽曲を強く意識した構成が徹底されていて、所々でプレイヤーの操作とシンクロさせてくる。盛り上がり所と同時に背景が切り替わったり、敵の大群が現れたり、特殊な演出が差し込まれたりなどなど。思わず全身が”ゾワッ”とする体験を味わえるのだ。

さらにそこに前作『VASTYNEX』譲りの素晴らしく派手で仰々しい爆発と、ショットを打ち込んでいることを嫌というほど意識させる質感抜群の効果音が鬼に金棒な相乗効果を発揮!ドカドカボコボコ敵や障害物が爆発し続け、その気持ちを楽曲が大いに盛り上げてはプレイヤーを没頭させる。そして、気付いた頃にはボスの所まで辿り着き、最後の大一番が開始。場面にマッチした専用の楽曲と熾烈な攻撃、そして締めの大爆発で気分を最高潮に高め、静寂のひと時を提供するのである。

正直、言葉にしてもよく分からないかもしれないが、とにかく気持ちよい。さながら派手なミュージックビデオを見ているかのような独特の演出が全編に渡って炸裂し、夢見心地な気分に浸らせてくれるのだ。それもあって「トリップ感」がほとばしっている。何かもの凄い映像の世界を体験したかのような手応えと爽快感が得られるのである。

実際にプレイしてみれば、この一連の意味がよく分かるはずだ。同時に本作がシューティングゲームにおいて最も面白く、気持ちよいと感じる瞬間にこだわり尽くした作品であることを思い知らされるだろう。思い知らされた末、クリア後、即2周目を開始する衝動に駆られたりもするかもしれない。現に筆者はそうなった。

何より、気持ちよいと感じる瞬間の多さに魅了された。個人の主観になるが、筆者はシューティングゲームにおいて最も楽しく、気持ちが高揚する瞬間というのは、プレイヤーの動きにステージの流れ、音楽、演出がピッタリガッチリとハマッた瞬間ではないか、と考えている。特に音楽はその気持ちを一番高揚させる要素であり、楽曲の盛り上がりに合わせて特殊な敵が大挙して現れたり、スクロール速度が速くなったりするとよく、身が引き締まるような思いになる。前作の『VASTYNEX』にも同様の演出が展開されるシーンが複数あり、中でもステージ6のボス戦は今もなお強い印象を残し続けている。

その種の演出に全編振り切っているから、気持ちいいのも当然としか言い様がない。何より、巡音ルカによるボーカル曲が流れるエリアはその点が際立って光っているので、意地でも見ていただきたいぐらいだ。
ちなみにボーカルは設定でOFFにすることも可能となっている。だが、本作はON設定で必ず遊んでいただきたいと声を大にして訴えたい。なぜかは件のエリアをプレイすることで嫌というほど分かる。この楽曲があってこそのステージだと、納得するはずだ。

トリップ感にフォーカスしてしまったが、純粋にシューティングゲームとしても完成度は盤石だ。敵配置は的確で、初見殺しも最小限に抑えているのみならず、サブウエポンのレベルによる耐久度のおかげで簡単にやられにくい。そのおかげで難易度も低め。残機を全て失った際のコンティニューは有限なのだが、最初から9回も可能に加え、復帰の度にフルパワーで再開されるなどシビアさは皆無。

かと言って終始、力押しで進めていける訳ではなく、場面によっては適したサブウエポンを活用して窮地を切り抜けるなど、システムを踏まえた立ち回りも要求される。ハイスコア狙いならば、なおのことそれを意識する必要あり。ノーミスによる専用ボーナスも用意されているので、目指してみれば普通にプレイした時とは違う尖った世界が広がるはずだ。

演出と爽快感にもこだわり尽くしはするが、こういったゲーム部分も全く抜かりはない。『VASTYNEX』もそんな長所があったが、本作もそれが見事に継承されていて、シューティングが苦手な人から得意な人まで広範囲にカバーするゲームバランスを実現させている。ここまでの紹介から、演出重視系のシューティングゲームなのかと思ったかもしれないが、断じてそれだけではない。このこともまた、プレイすればよく分かるはずである。

裏を返せば、プレイしないとその凄さや良さが分からないのがもどかしいのだが。

シューティングに爽快感を求める人には全力で推す傑作

気になる箇所も若干ある。特に目立つところではエリア4のボス。堅くて長期戦になりやすい。逆にその次に対峙するラスボスはホドホドの硬さで、長期戦になりにくい。他のエリアのボスもまた然り。

なぜこれほどの差が出ているのかは、ボス本体が盾を兼ねた球体に守られていて、ダメージチャンスが少ないことに起因する。この球体の耐久度がやや高く、壊すのに時間を要するため(さらに一定時間後に復活するため)、もう少しだけ柔らかくする余地があったように思える。堅くしたおかげで、ゲームクリアの壁として機能しているという見所もあるのだが、続くラスボスの調整を思うとどうにも違和感が残る。逆にラスボスの戦闘時間はあと少し長くしてもよかったのでは、と思うほどだ。ただ、とある演出を思うと、意図してあの強さにしている可能性も考えられるため、際どいところなのだが。

他にゲームモードは本編とエリアセレクトぐらいで、数としては少なめ。また、クリア後の特典でサウンドテストが用意されているのだが、この楽曲再生時に表示される演出が点滅仕様で目に大きな負担がかかる。目を反らして楽曲に集中すればいい話だが、ああもチカチカさせるのは自重を願いたかったところである。
念のため、本編にはその種の演出はほとんどないので、ご心配はなさらず。

主に気になった箇所はそれぐらいである。全体的な完成度は申し分ない。素直に傑作と言い切れる出来だ。前作『VASTYNEX』に続くポップな見た目のグラフィックも凝った仕上がりなほか、背景にも疑似的な3D表現があったりと迫力十分。ボリュームも1周約30分程度とお手軽で、1日の終わりに1プレイという遊び方にも適している。

主にシューティングゲームに破壊と爆発、演出とのシンクロを求める人ならば、クリーンヒットは確実の本作。スコアアタックも熱い仕上がりで、やり込みを求める人もお気に召すこと間違いなし。そして、シューティングゲーム初心者にも取っつきやすく、難易度も控え目なので、興味があれば迷わず飛び込んでみていただきたい。

音楽、ステージ、演出の3要素が生み出す極上のトリップ体験をぜひ!

[基本情報]
タイトル:『ZAKESTA』
作者:喜撃屋本舗(ざきち)
クリア時間:30分~
対応プラットフォーム:Windows
価格:無料

※ダウンロードはこちら
http://zakichi.ojaru.jp/zakesta.html

※紹介ページ(フリーゲーム夢現)
https://freegame-mugen.jp/shooting/game_9743.html


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