趣味で開発されることが多いフリーゲームでは、開発期間が長期化することも珍しくない。2~3年程度はよく聞くし、5年を越えるような作品もそれなりには目にする機会があるものだ。
とはいえ開発期間19年ほどというのは、流石に滅多にあることではないだろう。少なくとも筆者としては前代未聞である。その記載が気になって……というわけではないが(少しはあるが)、純粋にPVなどを見て2DアクションRPGとして面白そうだったのでプレイしたみたのが、2021年末に公開された『Relics Walker(レリクスウォーカー) ~真紅の令嬢~』だ。
実際にプレイしてみたところ長期開発も納得の、非常に作り込まれており操作レスポンスなどの手触りも良好、ボリュームもたっぷりの作品だったのでご紹介したい。なお、制作ツールは本作開発開始当時、発売間もなかったであろう「RPGツクール2003」である。
紅髪の少女が数々の遺跡を探索していく2DアクションRPG
本作の主人公は、鮮やかな紅髪と大きなイヤリングがトレードマークの少女アリエル(名前変更可能)。遺跡から発掘されるテクノロジーによって魔法から科学へと文明が移りゆく世界で、アリエルが遺跡を探索する「レリクスウォーカー」として活動を始めることから物語が展開していく。
ゲームはアリエルがさまざまなフィールドを駆け巡り、敵を倒しながら進んでいくが、攻略の面で主な舞台になるのは遺跡、すなわちダンジョンだ。遺跡ごとにコンセプトを感じるギミックや謎解き、落ちるとそこそこ痛いダメージを受ける足場の飛び移りアクションなど、探索面でもかなりの歯応え。これにバトルも加わって、じっくり遊べるアクションRPGに仕上がっている。
近接・遠隔攻撃を織り交ぜたコンボがワンボタンで自由自在!
本作のバトルの要となるのが、剣技による近接攻撃や、ナイフ、ブーメラン、火炎瓶といった多彩な武器による遠隔攻撃などを自由に組み合わせて繰り出すコンボだ。怒濤の連続攻撃で敵を圧倒できるのはもちろん、長いコンボを決めると体力にあたるVTPや、各種攻撃で消費するAPを回復させられる。積極的に攻めていくことが、結果的に生存力を高めることにも繋がるのだ。
さらに遺跡では、特定のコンボ数を達成すると開く扉があり、コンボは本作の攻略に必須のテクニックとも言える。これをサポートするのが、「リンクスタイル」というシステム。1つのボタン(キー)に5つまでのアクションを割り当て、同じボタンを続けて押すだけで順番に繰り出せる。
リンクスタイルは4セットまで設定でき、それとは別に単独のアクションをボタンに割り当てることも可能。一つのコンボの中で同じ攻撃を何度も使用すると「クラムジリィクローズ」というペナルティが発生し、コンボが途切れ少しの間行動不能となるため、多種多様な攻撃を織り交ぜていくのがポイントとなる。
とはいえリンクスタイルさえ事前にしっかり設定しておけば、ボタン連打でどんどんコンボが繋がっていくのであまり難しく考える必要はない。ほかにも遠隔武器使用時の硬直をなくせる「ウェポンキャンセル」などさまざまなテクニックがあり、アクションゲームの腕が並程度でもそれなりに、上級者ならさらにスタイリッシュな立ち回りができるポテンシャルのあるゲームシステムに仕上がっている。
プレイスタイルに応じた能力カスタマイズが可能
本作には一般的な経験値によるレベルアップは存在しない。代わりに用意されているのが、自由度の高い強化を実現する「シンクロスフィア」だ。
シンクロスフィアの強化画面には6つの珠(スフィア)が存在し、敵を倒すなどして入手できるポイントを消費して個別にレベルを上げることでアリエルの能力値を上げられる。スフィアは属性を変更することが可能で、火属性なら剣攻撃のダメージに影響する剣技能値、風属性なら剣以外の武器のダメージに影響する投技能値が上がりやすいなど、属性によって上昇する能力値の傾向が変わる。近接攻撃と遠隔攻撃どちらを重視するかなど、プレイスタイルに応じた調整が可能なわけだ。
さらに、スフィアの位置と属性に応じて、さまざまなアビリティが付与されるのも特徴。アビリティには特定武器の威力上昇やVTPあるいはAPの自動回復、トラップダメージの減少などユニークなものが多数揃っている。同じ属性でも配置によって得られるアビリティが変わるので、能力上昇と欲しいアビリティをどう両立していくかなど、カスタマイズが悩ましくも楽しいシステムだ。
ボリュームもたっぷり、探索・戦闘・物語すべてが作り込まれた傑作
本作の物語はアリエルのレリクスウォーカーとしての成長や、“Freedom Breeze”の二つ名を持つ伝説のレリクスウォーカーの遺産をめぐる謎を軸に展開していく。気品のある丁寧な口調ながら芯の強さを感じさせるアリエルをはじめ、登場するキャラクター達も個性豊かで魅力的。物語はアリエルの過去や魔法文明と科学文明の関係も絡みつつ、終盤にかけてスケールを増していく。細かい仕草なども描き込まれたドットグラフィックによる演出も見所だ。
あらゆる面で隙のない作り込みを感じさせる本作だが、1点だけ懸念事項としては、快適に操作するための設定のハードルの高さが挙げられる。本作はキーボードの数字キーに各種アクションを割り当てられるのだが、正直なところキーボードでの操作はお勧めとは言えず、この数字キーをさらにゲームパッドのボタンと紐付けてパッド操作することを想定した作りと見られる。実際、マニュアルにはゲームパッドのボタンにキー入力を割り当てられるアプリ「JoyToKey」による設定例が掲載されている。
ただし、使っているゲームパッドなどによってはマニュアルに掲載の設定をそのままなぞってもうまく行かず、試行錯誤が必要になるだろう。約20年前のツールで現代のゲームパッドのボタンをフル活用するようなアクションを実現する代償とも言える。煩雑に感じるかもしれないが、ここを乗り越えれば手間に見合うだけの縦横無尽なアクションゲーム体験が待っているので、どうか挫けずに頑張ってほしい。
本作の公称プレイ時間は初見で約20時間と、アクションRPGとしてはボリュームもたっぷり。遺跡も洞窟のようなものからサイバーな雰囲気を感じさせるものまで、バリエーションに富んだものが用意されている。探索・戦闘・物語とアクションRPGの醍醐味が存分に詰まっているので、このジャンルが好きなら是非ともプレイしてみてほしい。
[基本情報]
タイトル:Relics Walker ~真紅の令嬢~
制作者:点睛集積
対応OS:Windows
価格:無料
ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/27283