日々、個性豊かな新作が誕生し続けているフリーゲーム。その中には完成品に限らず、現在制作途上のものもあり、公開後も都度実施されるアップデートで完成に向け、着々と進歩し続けている。
本記事では、そんな制作途上のフリーゲームより注目の3本を紹介。
2022年最後となる今回は特別編。アクションアドベンチャー1本、RPG2本の計3タイトルに加えて、完成版が有償になることが示唆されているタイトルからも計2タイトルをピックアップした。
どれも完成版の公開および発売が期待されるタイトルだ。
機会があればぜひ、ダウンロードしてプレイいただきたい。(※有償が示唆されているタイトルは「☆」の付いた『Hack the Babel Inc.』と『スケイルスケイターズ』の2本になります)
目次
八の骸が嘆く刻
突如現れた怪異に殺されかけた主人公の少年「烏賀也阿希(うがやあき)」が、彼を危機から救った謎の少女「八生(やよい)」と共に怪異たちとの戦いに巻き込まれていく様を描く、ホラーアクションアドベンチャーゲーム。「CHAPTER」と称されたエピソードを順に追っていく構成で、本稿執筆時点では「CHAPTER 2」の途中まで体験可能となっている。
特徴は阿希と八生、それぞれで異なるパートを攻略していくという構成。阿希は謎解きと逃亡、八生は戦闘と明確に区分されており、システム面でも攻略面でも異なる展開が楽しめる作りとなっている。それぞれをゲームジャンルで称せば、阿希は探索型アドベンチャーゲーム、八生はアクションゲームといった具合。まさに1粒で2度美味しいを体現したゲームデザインが図られている。
また、本作は高難易度も売りのひとつとしており、阿希のパートでは僅かなミスがゲームオーバーへと直結する手に汗握るバランスになっている。
逆に八生のパートはダメージ制で、そう易々とゲームオーバーへと至りはしない。ただ、敵に応じて「怒」「恨」の状態それぞれの攻撃を使い分けるなど、戦術的な立ち回りが試される。状態にはもうひとつ「悲」もあり、こちらは体力回復技となっているが、そのたびに「呪力」を消費。しかも、呪力の最大値は9で回復手段も限定的。加えて強力な技を決める際にも「呪力」を用いるため、特にボス戦では無駄に使いすぎないことが重要。そんな阿希とは異なる手に汗握るバランスとなっている。
ホラーを名乗るなりにその手の演出、残酷な表現も満載。しかし、それに対抗不能なか弱い立場、対抗可能な強い立場を交互に体験するという設定と全体の構成が面白く、個性的な作品になることを予感させる。完成版は2023年初頭配信予定。現時点でも構成面で魅せる内容になっているので、興味があれば体験いただきたい。
[基本情報]
タイトル:『八の骸が嘆く刻』
作者:ナラクのソコの鮭
クリア時間:1~2時間
対応プラットフォーム:Windows
価格:無料
備考:暴力、出血、ホラー描写あり
ダウンロードはこちら
◇ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/29292
魔法少女パラノイド
その名の通りの魔法少女を題材にした、横スクロール型RPG。人の心を悪へと変えてしまう謎の存在「バグ」との戦いに主人公の「夢宮める」が巻き込まれていくというストーリーが展開される。
基本的にはバグによって悪へと変えられた人間の心の中を進み、その根源となる大ボスの撃破を目指していく形となる。RPGとしての作りは、マップが横スクロール形式であるのを除けば割と王道。戦闘もマップ上の敵シンボルに接触すると発生、敏捷性の高いキャラクターから行動するコマンド選択型であるなど、ジャンルの定番を網羅している。
ただ、ビジュアル全般が強烈。可愛さと狂気が入り混じったかのような、いい意味で居心地の悪い雰囲気が醸し出されている。特に雑魚敵の容姿には思わず「なんだこれ!?」と言いたくなること確実。あえてこの場ではその紹介を伏せるが、恐らくそのようなツッコミと同時に「どこにいるんだ……?」と困惑してしまうかもしれない。
また、本編はエピソードごとに設けられたストーリーを追っていく構成になることが示唆されている。体験版に収録されているプロローグは数十分で終わってしまう内容だが、道中にはアイテムを使った謎解きがあったりと、それなりに凝った構成になっている。これが完成版ではどうまとめられるのか、一通りプレイした感じでは注目されるところである。
横スクロールの関係上、敵との戦闘が回避できないという気になる点もあるが、強烈なビジュアル、若干不穏な気配も感じられるストーリーなど、際立った個性を持つ作品。今後、プロローグ以降も体験できるアップデートが実施され、全貌が明らかになっていくことに期待だ。あと、魔法少女らしい活躍が描かれることも。現時点では物理攻撃主体なので……。
(それで戦う魔法少女もいますけどね……)
[基本情報]
タイトル:『魔法少女パラノイド』
作者:水菓子みぞれ
クリア時間:10~15分(プロローグ)
対応プラットフォーム:Windows
価格:無料
ダウンロードはこちら
◇ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/28808
THE LAST WISH
「ふりーむ!」記載の説明文いわく、スーパーファミコン後期の2Dドットの王道ファンタジーRPGを目指しているという作品。
ストーリーに沿って発生するイベントを攻略しつつ、様々な土地を巡っていくという、王道の言葉通りな内容。演出面でも、イベントはマップ上のドット絵のキャラクターたちに焦点を当てて描くなど、スーパーファミコン後期を思わせる仕上がりになっている。ただ、グラフィック面ではジオラマ風に表示するエフェクトを採用するなど(※設定でOFFにすることも可能)、現代風の表現も用いられている。
システム面でも主に戦闘周りに様々な工夫が凝らされている。特に「スタガー値」なる、敵を一定ターン気絶させ、大ダメージを与えるチャンスを発生させるゲージがその象徴。これを意識して狙うか否かで、難易度および戦況が一変する調整が図られている。プレイヤー側にも「オーバードライブ」なる、2ターン限定のステータス上昇および強力な「開放奥義」を放てるチャンスが作れ、前述の「スタガー値」と組み合わせれば、鬼に金棒な効果も期待できる。他にメニュー画面経由で習得するスキル、ヒット数増加と共にダメージボーナスが加わるコンボなど、攻撃的な要素が満載。さらにはこちらの演出面もイベント同様、ドット絵のキャラクターが動くことに焦点を当てた作り。当時特有の描写を可能な限り実現させるという、スーパーファミコン後期の作品へのこだわりの現れた仕上がりになっている。
ただ、戦闘テンポもその頃を思わせる”間”を挟むもので、そこは賛否が分かれやすい。本稿執筆時点で早送り機能も実装されていないため、近頃のRPGのテンポに慣れている人ほど気になるだろう。
とは言え、掲げているコンセプト通りのRPGで、新しくも懐かしい香りが漂う。特に戦闘面の攻撃的な作りは興味深いものになっているので、RPG好きならば要チェックだ。
[基本情報]
タイトル:『THE LAST WISH』
作者:From Scratch
クリア時間:3~4時間
対応プラットフォーム:Windows
価格:無料
ダウンロードはこちら
◇ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/28009
そして、以下から紹介するのは、完成版が有償になることが示唆されている2タイトルである。
☆Hack the Babel Inc.
1本目の完成版が有償になることが示唆されている作品は『Hack the Babel Inc.』。巨大企業「Babel(バベル)」の社内サーバーへの不法侵入達成という、異様な入社試験に挑むことになった主人公の奮闘を描く思考型パズルゲームだ。
ゲーム自体はいわゆる「マインスイーパー」で、マウスでカーソルを動かし、マス目をクリックして開きながら隠された「トレジャー」を見つけていく。
最大の特色はローグライク要素を持つゲームシステム。主に本編の流れにそれが顕著に出ていて、トレジャーを見つけつつ隠された「階段」を発見し、次の階層へと移動する形で進んでいくようになっている。また、マス目を開ける際にはパートナーである「ハッキングAI」に設定されたスタミナを消費。これが無くなるとゲームオーバーになり、最初の階層からやり直しになってしまう。
そのため、マス目を開ける際には慎重な判断が試される。手がかりは開けたマス目に描かれた矢印風のアイコン。それが指し示す方向のどこかに「トレジャー」が隠されているので、スタミナの残量を踏まえながら開けていく感じだ。
だが、各ステージにはハッキングを妨害する敵も徘徊。しかも、彼らはスタミナをより多く消費するマス目に改造してしまうため、下手に考え込んで時間を消耗すると大変なことになる。さらに階層が進むとボスも登場。様々な手を用い、ダメージを与える直接対決となるので、ここまでの間にスタミナを消費しすぎていれば……お察しだ。
こんな具合に基本はマインスイーパーなのに、ローグライクの手応えに富んだ独創的な作品になっている。他にハッキングAIの永続強化を図る成長要素、アイテムを用いた窮地の打開といった戦術的な要素もあり、ローグライクらしさを際立たせる。コンセプトは「遊ぶたびに解き方が変わるパズル」で、実際その通りの遊び心地を持った1本。一連の要素に心惹かれるものがあればぜひ、体験版をプレイしてみていただきたい。世にも奇妙なハッキングの世界へようこそ。
[基本情報]
タイトル:『Hack the Babel Inc.』
作者:amaytan
クリア時間:3~4時間
対応プラットフォーム:Windows
価格:無料
ダウンロードはこちら
◇Steam
◇itch.io
https://amaytan.itch.io/hack-the-babel-inc
◇ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/26238
☆スケイルスケイターズ
続く完成版が有償になることが示唆されている作品は『スケイルスケイターズ』。同人サークルのINSIDE SYSTEM開発によるアクションゲーム『魔神少女』の二次創作タイトル。同シリーズのプレイヤーキャラクターのひとりで、1作目にて最終ボスを務めた「リーバ」を主人公とする探索型アクションゲームである。
ストーリーは謎の国へと迷い込んでしまったリーバが元の世界へ戻るために奮闘するというもの。基本的に広大なマップを行き来しながら新たな能力を獲得し、行動範囲を広げながら進めていく構成となっている。
特徴的な要素ではタイトルにも冠されている「スケイル」。とあるボスを倒すと手に入る能力で、2種類のブロックの内、片方を出現、もう片方を消去できるようになる。これで道を切り開いたり、時に足場を確保しながら進む場面が設けられている。
PC(Steam)、Nintendo Switchなどで発売中のパズルアクション『マイティースイッチフォース!』のスイッチシステムみたいなものと言えば想像しやすいだろうか。現在遊べる体験版では進路確保に徹しているが、使い方次第ではパズル的な場面を作り出せそうなため、今後の発展が注目される。能力面では他にも竜巻を発生させ、大ジャンプするというものもあり、それらを使う際に「シェガー」を消費するという『魔神少女』の要素が押さえられているのも見所だ。
グラフィック、音楽も昔の携帯ゲーム機を思わせる仕上がりに加え、世界観もダークな感じで原作とは一線を画している。探索型としてのツボも見事に押さえていて、新能力を獲得した後、自然に練習させる場面を設けている所にこのジャンルへの理解度の高さを筆者個人としては感じた次第だ。若干、ゲームパッドのキーアサイン(特にジャンプ)に違和感があるものの、手触りは申し分ない。ストーリーも本作単体で独立しているため、『魔神少女』未経験者も楽しめる。特に探索型アクションゲーム好きなら要チェックだ。
[基本情報]
タイトル:『スケイルスケイターズ』
作者:かぼちゃれんが
クリア時間:15~20分(※プロローグ)
対応プラットフォーム:Windows
価格:無料(※itch.ioは寄付可能)
ダウンロードはこちら
◇itch.io
https://lumi-kbrn.itch.io/sukeiru-skaters
◇BOOTH(要:pixiv ID)
https://booth.pm/ja/items/2969296