今回紹介する作品は、フリーゲームとして公開されているRPG『ワタリドリ冒険記』。ユニークなクラスの組み合わせによるパーティ編成の戦略や、それを活かして戦うギミック系ボスなどが見どころの作品だ。フィールドやダンジョンにもロケーションごとの仕掛けがあり、遊び応えのある中~長編RPGに仕上がっている。
物語は、人々の依頼をこなして生計を立てる「ワタリドリ」として世界を旅する少女レミと、彼女が姉のように慕いペアを組んでいるエイファが、とある町の近くで起きた異変を調べることから展開。やがて新たな仲間も得ながら冒険を繰り広げていく。
9つのクラスと装備品クラフトによる自由度の高いキャラビルド
本作の特徴は、最大4人のパーティメンバーがそれぞれ、9種類用意されたクラスを自由に選べること。クラスごとのスキルツリーにより、レベルアップなどで増えるポイントを消費してさまざまなアクティブ・パッシブスキルを習得していく。
攻守2タイプの「構え」を変えることで能力や使えるスキルが変化する「モンク」や、各種行動で上昇する“カートリッジレベル”を消費して強力なスキルを放つ「アームズ」など、クラスはどれも特徴が尖ったユニークなものばかり。組み合わせによるパーティ編成で自分なりの戦略を立てていける。
またゲームを進めると、メインのクラスのほかにサブのクラスを1つ選べるようになる。メインとサブのクラスの大きな違いは、そのクラスの強みを発揮するのに大きく貢献するパッシブスキル「クラスパッシブ」が、メインクラスでのみ利用可能な点。たとえば状態異常の扱いを得意とする「メイジ」のクラスパッシブ「闇の烙印」は、自分やパーティメンバーが敵に状態異常を与えた際、敵のパラメータを永続的に低下させる。クラスパッシブはどれも強力で魅力的なものばかりなので、どちらをメインクラスにするかは非常に悩ましい選択だ。
クラスと並んでキャラクタービルドの要となるのが武器や防具といった装備品だが、本作の大きな特徴として、一部の特殊なアクセサリや最序盤の汎用装備を除き、装備品は敵からドロップする素材を使用するクラフトでのみ入手可能となっている。装備品の中には専用のアクティブ・パッシブスキルが利用可能になるものなどもあり、とくにボスや一部の強敵の素材がもとになる装備品は強力なものが揃っている。
欲しい装備品の素材を集めるのも敵と戦うモチベーションになっており、それにより自然とレベルも上がっていく。さらにゲームを進めることで新しい装備品がクラフト可能にと、攻略とパーティ強化の綺麗なサイクルができあがっている印象だ。
こうしたキャラクターごとのビルドと、その組み合わせによるパーティ単位での戦略構築が本作の醍醐味だが、スキルツリーもクラスの選択自体も、一切のデメリットなくリセットしてやり直せるのも本作の大きな特徴だ。色んなクラスを自由に試してみたり、特定の状況へ対策するためのスキルをピンポイントに習得したり。また、メインクラスによって使える装備品が変わるので、ボスの素材で強い装備品ができたので使いこなせそうなクラスにしてみる、なんてのもアリだ。
多彩なシステムやギミックで演出されるタイムライン型のバトル
本作の敵、とくにボスなどは独自のギミックを持つような敵ばかり。ゲーム進行に必須ではない、おまけボス的な強敵も存在し、多彩なバトルを楽しめる。戦闘システムは敵味方が入り交じって順次行動するタイムライン型のコマンドバトルで、行動によっては選択後に発動まで待機時間がある仕組み。スキルによっても待機時間が異なっている。
戦術面で注目なのが選択後即座に発動し、さらに続けて次の行動を選択できる「クイックスキル」の存在だ。これにより手数を稼ぎ、テンポ良く戦闘を進めることができる。
とくに自己強化系のステータスバフはいずれもクイックスキルとなっており、コマンドバトルにありがちな「自己強化バフに1手かける価値はあるか?(その代わりに1回多く行動する方がトータルで得になりはしないか?)」というジレンマから解放されシンプルに使い得となるのが良い調整だと感じた。
また、戦闘においては敵の能力の把握が重要だが、敵のステータスは随時確認できるほか、敵・味方ともにかかっているバフ・デバフ等を確認するUIも用意されている。その敵オリジナルの特殊な状態なども説明文を参照できるため、多様なシチュエーションを演出するためのシステムとも言えるだろう。
本作の戦闘の調整においては、回復魔法が存在せず、回復は主に消費アイテムで行うのも特筆すべきポイントだ。回復アイテムを効果的に使うスキルをもつクラス「アルケミスト」は存在するが、アイテムが必要なことには変わらない。回復アイテムの所持最大数も少なめで、回復頼りの持久戦は難しく、緊張感のあるバトルに仕上がっている。
PS~PS2時代の王道RPGの香りただよう良作
本作ではフィールドやダンジョンも、そのロケーションらしいマップ構成や専用のギミックなどが用意されており、単なる通過点ではなくしっかり攻略を進めていく実感を得られるものとなっている。一方でザコ戦を任意にキャンセルできる「エンカウントキャンセル」の仕組みがあり、仕掛けの解除などに集中したいときも安心だ。
またこれは多少のネタバレになってしまうが、世界観はファンタジーを基調としつつ、物語を進めるとその裏にSF的な要素も垣間見えてくる。こうしたテイストや、戦闘はもちろんマップ探索にも感じる遊び応えからは、PS~PS2時代の王道RPGに近い雰囲気が感じられた。物語の構成・演出面において当時の作品へのオマージュを感じる場面もあり、あの頃のRPGが好きなら懐かしさを覚えることもあるかもしれない。
とはいえファストトラベルの完備やメッセージログ機能など、UIの丁寧さも含め現代の作品らしい遊びやすさへの配慮も行き届いており、RPG好きなら誰にでもお勧めできる良作に仕上がっている。とくに自由に構築したパーティでギミック系のボスと戦うのが好き、という方にはぜひプレイしてほしい作品だ。
[基本情報]
タイトル:ワタリドリ冒険記
制作者:ミズ氏
想定プレイ時間:15~25時間
対応OS:Windows
価格:無料
ダウンロードはこちらから
https://freegame-mugen.jp/roleplaying/game_10714.html