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【きりふだ】を運べ―独自のバトルシステムと取っつきやすさが魅力のノンフィールド型RPG『ローグライクVida』

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2022年12月に報じられた通り、ブラウザゲーム投稿サイト「ゲームアツマール」は2023年6月28日をもってサービス終了となる報道記事)。

報道後、公開されていたゲームの多くは「ふりーむ!」「フリーゲーム夢現」「PLiCy」といった、他のフリーゲーム、ブラウザゲーム配信サイトへの移行を始めている。

移行に限らず、報道があってから新たに公開されたゲームもある。今回取り上げる『ローグライクVida』もそのひとつだ。

本作は2023年1月20日、「ゲームアツマール」にて無料のブラウザゲームとして公開された。当初は制作途上のバージョンで、3月18日に正式版となるver1.0へとアップデート。それに続く形で「PLiCy」「フリーゲーム夢現」での公開も開始されている。

なお、アツマール版のセーブデータは「PliCy」への移行に対応。一方、「フリーゲーム夢現」への移行は本稿執筆時点で未対応となっている。
そのため、これからプレイするに当たってはあらかじめご注意いただきたい。

ローグライク、カードバトルの要素を併せ持つノンフィールド型RPG

ジャンルとしては、フィールドマップが存在しない、いわゆるノンフィールド型のロールプレイングゲーム(RPG)となる。

プレイヤーは謎の少女より託された【きりふだ】の入った箱を持ち、闇の住民たちがうごめく迷宮の最奥にあると言われる【せいひつ】を目指す。

ゲーム本編の流れとしては、全10+αのジョブ(プレイヤーキャラクター)の中から1つを選択したのち、迷宮内の複数ある層を順に攻略していく形となる。

各層は複数のフロアで構成されており、基本的に1歩ずつ前進していく。そして、一定数のフロアを超えるとボスとの戦闘が解禁。そのまま挑んで倒せれば、次の層へと進むという仕組みとなっている。

最終的に一番深い層【せいひつ】に到達し、諸々こなせばゲームクリア。逆に途中で倒れてしまうとゲームオーバー。それまでの成果すべてを失い、最初の層からやり直しになる。

タイトルに冠されている通り、本作はローグライク。その特徴にならい、本編は1回限りの挑戦となる。また、各層の展開も挑戦のたびに変化。というのも、フロアは複数あるうちの1つをプレイヤーが都度、選んでいく形になっている。

前進のたび、どちらに進むかの選択肢が現れ、どれを選んだかで以降の展開が変わるのだ。選択肢はカードで表現され、選んだ後には基本、カードに描かれた通りの展開が発生するようになっている。「宝箱」を選べばアイテム獲得のチャンス、といった感じだ。

逆にそれ以外を選ぶとなんらかのイベントが起きる。多くは闇の住民あらため、モンスターとの戦闘だ。これに勝たなければ、次のフロアへは前進できない。

戦闘は1対1のターン制。ただ、その作りは非常に独特だ。端的に言うとカードゲーム方式。手札の中から1枚を選び、相手への攻撃を始めとする行動を実施していく。この段階でなら、いかにもなカードバトルだが、細かい部分を見ると変わった特徴がある。

象徴的なのが【コスト】と【ば(場)】の概念。

敵味方問わず行動を実施すると、画面中央の空白のカードで表されたマス目フィールド上にあるプレイヤーのアイコンが右から左に向けて移動。移動するマス目はカードに記された【コスト】の数字、例として「3」なら3マスといった具合に決定される。そして双方が移動し終えた後、一番右側に近いキャラクターから行動となる。一番左側に近いキャラクターは後攻となってしまうのだ。

また、フィールド左端は【じかんだまり】なる場所で、ここまでアイコンが到達するとそれ以上左へは進めなくなる。そして、ここでカードを使った時に限り、キャラクターは右に向けて動く。移動するマス目は、左に向けての時と同じく【コスト】で決定される。次の行動も従来通り、一番右側に近いキャラクターから開始。あわせて、次のターンへと移るのである。

このようにターン制とは言え、一風変わった仕組みのもとで展開される作りになっている。カードゲームとしても、【コスト】は行動の機会を与える指標のようなもので、使える(選べる)カードに制限を与えるものにはなっていない。

さらに言えば、手札のカードをプレイヤー側が編集するのも不可能。最初に選んだジョブと関連付けられて決定されるのだ。選べる種類を増やすのも、フロアの移動中に新たな【もちもの】を手に入れて所持するだけ。それと同時に戦闘中、【もちもの】に沿ったカードが出てくるようになる。ただし、出てくるか出てこないかはランダム。当然、出ないこともある。

それらの特徴もあって、カードゲームとして見ても少し変わった作りをしている。システムの手触りそのものは、いかにもカードゲームだが何かが違う。ターン制の戦闘も同様。そして、ノンフィールド型の本編にしても、知っているようでどこかが違う。

そんなゲームデザイン面で”得体の知れなさ”が漂う作品に仕上げられている。

見たまま遊べて、侮りがたい戦術性を秘めた戦闘システム

得体が知れないとは書いたものの。ゲーム自体は結構取っつきやすい。
本作の最も象徴的な魅力を挙げるなら、そこになるだろう。

具体的には戦闘システムのことになる。正直、カードゲームという紹介で警戒心を持つかもしれない。一般的にカードゲームと言えば、ルールやカードの情報など、覚える必要のある情報量の多さなどから取っつきにくさがイメージされやすいためだ。

本作も【コスト】と【ば】の関係など、ある程度の理解が求められる部分はある。ただ、戦闘そのものは直感的に楽しめる設計だ。そもそも、カードと言っても本作の場合、「戦う」や「魔法(スキル)」などのコマンドを絵的に表現したものにすぎない。

そのため、「攻撃したい時は攻撃のカードを選ぶ」との理解さえあれば普通に遊べる。もちろん、それぞれのカードには状態異常など、追加の効果も設定されていて、最大限活用するとなれば情報の把握は必須となる。だが、カードの数そのものが少ないため、そんなに時間を必要としない。(個人差はあれど)大体2~3回ほど戦闘を経験すれば、どんなものか把握できてしまうのだ。

なので、特徴とは裏腹に取っつきやすい。見たまま遊べるシステムに仕上げられているのだ。扱うカードがジョブごとに決まっていて、手札に出すカードを編集するという手間がないことも、それを際立たせている。

ローグライク由来のシステム周りも同様、取っつきやすくするための工夫が凝らされている。前述の通り、本作はゲームオーバーになれば最初の第1層からやり直しになる。また、ゲームオーバー後、それぞれのジョブの基礎ステータスを永続的に強化させる類のアップグレードシステムもない。とことん1発勝負で、昔ながらのローグライクを踏襲している。

ただ、やられても1回だけ体力を全回復してリトライできる救済措置をデフォルトで実装。また、1周クリアに要する時間は約30分。よほど熟考しながらのプレイでなければ、1時間を超えることはまずない。さらに戦闘難易度を下げるジョブもある。それを選んで”ゆるく”楽しむことも可能だ。

それらの工夫もあって、1周単位のプレイはそれほど重くない。何より周回のたびに前述の戦闘システムへの理解が深まり、戦術にも変化が出てきたりなど、上達が現れやすい。それでも永続強化がない点で一定のシビアさはあるが、全体的に「これなら何とかなるかも」と希望を持てる見たまま遊べるバランスになっているのは特筆に値すると言えるだろう。戦闘システムほど分かりやすい”見たまま”ではないものの、実際に遊んでみれば、その絶妙なさじ加減に気づかされるはずだ。

戦闘システム自体も非常に面白いものに仕上がっている。特に【コスト】と【ば】には、単純な仕組みとは裏腹に高度な読み合いと駆け引きの面白さが秘められている。

前述では言及しなかったが、カードで可能な行動は攻撃や回復などに限らない。【ば】にトラップを仕掛ける、相手を左側に押しやるといった特殊なこともできるのだ。中には相手のアイコンを追い抜いた際、追加攻撃や状態異常などを加えるカードや【もちもの】も存在し、使えるか使えないかで戦術がガラリと変化する。

最初に選択するジョブも、それぞれ尖った個性付けが図られているため、選んだタイプによって戦闘スタイルや難易度も変わる。それもあって、戦闘システムの全容を極めるなら1周クリアするだけでは足りない。ジョブの総数分の時間が必須だ。どれくらいの時間になってしまうかは各々ご想像を。それぐらい、やり込もうとなれば長く遊べる仕上がりになっているのだ。

どこかボードゲーム的な遊び応えがあるのも魅力。特に相手がどれぐらい移動するのかをあらかじめ把握し、そこに重なるようにトラップを仕掛けるのは非常にそれっぽい。そこにカードゲームの要素が絡んでくることも、分かる人には分かる”あのゲーム”が脳裏を過ぎったりするかもしれない。(それにしてもあのゲーム、近頃音沙汰がないな……)

取っつきやすさも十分魅力的だが、そんな具合に戦闘システムも負けず劣らず。とりわけ【ば】を意識しながら最適な一手を出していく過程には独特の戦術・戦略性が秘められているので、その辺を重視した戦闘システムを好む人には必見である。

いわゆる「デッキ構築型ローグライク」ではないことに注意

逆に言えば、本格的なカードゲームを求める人には受け入れにくい側面もある。特に手札のカードをプレイヤー側で自由に編集できない、いわゆる「デッキ構築」の要素が存在しないことは賛否が分かれるだろう。

また、近頃はカードゲームとローグライクを重ね合わせた「デッキ構築型ローグライク」なる作品がインディーゲーム界隈で人気を博し、多くの派生が誕生してきているが、本作は「デッキ構築型ローグライク」ではない。理由は明らかで、デッキ構築の要素がないからだ。なので、それと全く同じゲームだと思って遊ばないようご注意いただきたい。おそらく、期待している遊びと戦略を練る楽しみはほとんど味わえないだろう。

その他にも好みが分かれそうなものとして、運が絡む戦闘。前述の通り、本作はデッキ構築の要素がない関係で、手札のカードをプレイヤー側で調整できない(ジョブごとに決まっている)。そのため、酷い時には望みのカードが現れず、それまで有利だった戦況が覆されてしまうこともある。

一応、宝箱などから手に入る【もちもの】で出現するカードを追加できるが、それも手札に出るか否かはランダム。さらに【もちもの】の最大数は4個。しかも、そのうち1個は【しょうじょのきばこ】なるアイテムで占領される。このアイテムを使えば4個に増えるが、それでも少なく、運を抑え込めない。際どいところだが、もう少し運の絡みを抑え込めるよう、あと1枠用意して良かったように思える。3~4個でも十分、クリアは可能だが、やはりもう少し運の影響は抑える必要があると筆者は感じた次第だ。

それ以外では、探索がどの層もややワンパターンなことが少し気になるぐらいだろうか。取っつきやすい、戦闘システムが個性的との見所はあれど、そうした好みの分かれる部分が存在しているのは念頭に入れておいて欲しい。それとは別の仕様上の注意点で、セーブ容量が非常に大きいこと(※アツマール版を例にすると、50ブロック以上に膨れ上がることがある)も然り。

ただ、全体的にはおススメできるタイトルだ。やや賛否の分かれる部分はあれど、戦闘システムの独自性には光り輝くものがある。ここまでのスクリーンショットが物語る通り、グラフィックもキャラクターのイラストを始め、非常に手の込んだ仕上がり。音楽も懐かしくて新しいテイストの楽曲が揃っていて、戦闘を始めとする様々な場面を盛り上げる。


▲ジョブにはこんな変わったタイプも……

基本はノンフィールド型のRPGだが、戦闘はカードゲームのようでボードゲームのようで大変個性的。それでいてローグライク特有のシビアさもバッチリの本作。少しでも関心を抱いたのならば、ぜひこの迷宮へ。様々な戦いを乗り越え、【きりふだ】を送り届けよう。

[基本情報]
タイトル:『ローグライクVida』
作者:エレゾウケイ
クリア時間:20~30分(1周)
対応プラットフォーム:PC、スマートフォン
価格:無料

◇プレイはこちら
・ゲームアツマール
https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm24228

・PLiCy
https://plicy.net/GamePlay/151743

・フリーゲーム夢現
https://freegame-mugen.jp/puzzle/game_11050.html


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