1985年、ゲームメーカー・ハドソン(現:KONAMI)が主催し、全国規模で展開されたゲーム大会「ハドソン全国キャラバン」。この大会における主流ジャンルとなったのが『スターフォース』、『スターソルジャー』を始めとした縦スクロールで進行するシューティングゲームで、多くの参加者達がハイスコアという名の栄光を求め、激しい得点争いに臨んだ。
ゲームコントローラのボタンを高速で連打する「16連射」の必殺技で名を馳せた「高橋名人」が誕生したのもこの頃であり、『スーパーマリオブラザーズ』の大ヒットによって起きたファミコンブームに更なる火を付けると同時に、シューティングゲームにとっても黄金期を迎え、アクションゲームに並ぶ中心ジャンルの一つとして活況を呈した。
それから30年以上が経った現在、シューティングゲームはコンシューマ市場で新作が作られる事が珍しいジャンルになってしまったが、フリーゲーム、インディーゲーム界隈においては今なお、積極的に新作がリリースされ続けている。
今回紹介するのは、先に挙げたキャラバン時代を始め、シューティングゲームが中心ジャンルとして活況していた頃への思いを馳せた個人製作のフリゲ作品『Image Striker(イメージストライカー)』だ。
製作者はてらりん氏。2016年7月10日にパソコン(Windows、Mac)、スマートフォン(iOS、Android)向けに公開された。詳細は後述するが、パソコン版とスマートフォン版は操作周りが異なる特徴がある。
しかし、基本的なゲーム内容は双方変わりなし。「弾を撃って回避し、高得点を競う」シューティングゲームの原点を尊重し、ゲームバランスも親しみ易さを第一とする調整が図られた、キャラバン時代の香り漂うシューティングゲームに仕上げられている。
STG黄金期への思いが馳せられたゲームシステム
シューティングゲームとしての作りは王道。画面上より迫り来る敵をショット攻撃で撃墜し、ボスの撃破を目指す。スクロールは縦方向で、先のキャラバン時代のシューティングゲームと同じスタイルを踏襲している。
ただ、システム周りは1988年にアイレムより発売された『イメージファイト』を意識したものになっている。主に両サイドおよび後方に配置できる「ポッド」、ショット性能を変化させる「ヘッドパーツ」なるアイテムで自機をパワーアップさせられるところは同作とほぼ一緒だ。作品の名前が『Image Striker(イメージストライカー)』と似通っているのもその事を象徴しており、その影響が伺える。その為、同作をプレイした経験のあるプレイヤーなら、懐かしさを覚えるかもしれない。
▲参考画像:『イメージファイト』(※WiiUバーチャルコンソールで配信中。)
ゲームデザインに対し、ゲームモードはキャラバン時代のシューティングゲームへの影響を受けたラインナップ。数は二種類だけだが、その一つが「キャラバン」と名付けられている点で、当時のシューティングゲームをやり込んだプレイヤーの関心を引く。
肝心の内容も3分以内にどれだけの高得点を叩き出せるかを目指す、スコアアタック特化型の懐かしいやり応えに富んだ作り。「弾を撃って回避し、高得点を競う」の醍醐味を存分に堪能でき、当時のシューティングゲームに愛着を持つプレイヤーの心をときめかせるゲームモードになっている。こちらもこちらで、往年のプレイヤーであればシステム周りと同じデジャヴを覚えてしまうだろう。
全体的に往年の名作からの影響が強く現れた作りで、独創的なシステムも無い為、新鮮味は乏しいかもしれない。しかし、非常に取っ付き易く、シューティング初心者にもオススメなゲームに完成されている。
特に「親しみ易さ」にこだわって調整された難易度がその魅力を引き立てている。控え目の弾幕、残機アップがしやすく、力押しの戦術が比較的簡単に通用するなど、シューティングが苦手なプレイヤーから遊んだ経験のない初心者でも気軽に「弾を撃って回避し、高得点を競う」醍醐味を満喫できる。
難易度選択機能も実装されているほか、一度クリアしたステージはステージセレクトに登録され、ゲームオーバーになっても容易に途中から再開できるので、エンディングを目指すのもイバラの道ではない。
昔ながらのシューティングゲームよろしく、敵の弾に被弾すれば一発で自機が撃墜されるルールが採用されてはいるが、とにかく先へ進みたい気持ちにしっかり応えてくれる懐の広さも残した好バランス。当時のプレイヤーのノスタルジーを喚起させつつ、若い世代にもその頃の雰囲気と楽しさを味わってもらいたいという思いが込められた設計になっている。
残機アップのしやすさが高い難易度への挑戦を促しているのも見所。基本的に難易度を上げることで残機アップのために必要なスコアが増える事は無いので、力押しの余地は残されるのである。
ステージセレクトのクリア記録も難易度別に行われないので、一つのステージだけ高い難易度での攻略に挑戦してみるお試しプレイをしてみるのも良し。こう言った様々な遊び方を許容しているところにもまた、親しみやすさへのこだわりを実感させられるだろう。
親しみ易さへのこだわりが現れた難易度
ステージも親しみ易さへのこだわりが現れている。今作には全部で6つのステージが用意されているが、いずれもボリュームが短め。大体、1~2分以内にはクリアできる。
悪く言えばアッサリ気味なのだが、間延びすることなくテンポ良く進むので、駆け抜けていくだけでも気持ちよい。
シューティングゲームはステージを長くすればするほど、プレイヤーに与えるストレスが増していく。特に一発でも被弾すれば自機が撃墜されるルールを採用しているものほど、そうなりやすい。そこに一つのステージをクリアするのに10分以上かかる、ゲームオーバーになったら最初からやり直しという特色があれば、幾ら難易度を控え目にしていても、苦手なプレイヤーや初心者には遊ぶのに覚悟の必要なゲームと認識されてしまうだろう。
そのような間延びによるストレス増大への配慮を今作は徹底していて、シューティングに苦手意識のあるプレイヤーや初心者でも気持ちよくステージを進めていけるようにしている。手に汗握る敵との攻防を負担を与えない程度に楽しませる。そう言ったレベルデザインを実施し、親しみやすい作りとしているのだ。
もちろん、やり応えを演出する為の工夫もなされており、敵の出現パターンや配置は巧妙。ステージごとの差別化もしっかりと行われており、特徴的なギミックと奇抜な攻撃を仕掛けてくるボスキャラクター達で楽しませてくれる。キャラバン時代のシューティングゲーム、『イメージファイト』への思いが馳せられたネタが凝らされているのも見所。
ステージ1では、『スターフォース』を髣髴とさせるスピーディな展開が繰り広げられたり、ステージ2では横から巨大戦艦が現れ、「ポッド」を装備しての対処が求められてくるなど、いずれかの作品を遊んだプレイヤーをニヤリとさせる。
3分間の限られた時間で高得点の獲得を目指す「キャラバンモード」も、「弾を撃って回避し、高得点を競う」の醍醐味が詰まった内容で、ポッドやヘッドパーツが一切登場せず、通常装備だけで戦うという制約が熱い。
繋げていくことで得点が増していく「コンボ」、自機を挟み込む攻撃を仕掛けてくる敵が登場するなど、キャラバンを名乗るだけにあるシステム、ネタも取り揃っていて、極め甲斐は抜群。親しみやすさにこだわりつつ、シューティングとしての遊び応え、それもキャラバン時代の熱さを再現することを追求した作り込みには、製作者の当時の作品への愛の深さを感じ取れるだろう。
異なる二つの操作で、シューティングゲーム黄金期の興奮を。
先の通り、今作はパソコンとスマートフォンの二つのプラットフォーム向けに公開されていて、いずれも異なる操作で楽しめる作りになっているのも特徴の一つ。パソコンはキーボード、ゲームパッドによる精密な操作が可能なのに対し、スマートフォン版は自動連射システムを搭載による直感的な操作で遊べるなど、双方共に異なる手応えを実現している。
また、スマートフォン版は広告が表示される仕掛けも無し。それらに煩わしさを覚えるプレイヤーに良心的な作りになっているのも見逃せないところだ。
「親しみやすさ」を重視した為か、熟練のプレイヤーには物足りなさを感じるところがあるのも否定できない。一応、高難易度「ハード」も用意されているのだが、力押しが効き易い作りなのもあって、全体的にやさしい。慣れたプレイヤーであれば、もう一段階、難しい難易度で遊んでみたいという、欲求不満の気持ちになるかもしれない。
また、演出周りもやや弱く、筆者個人としては特に効果音周り、爆発と撃ち込みの音に関してはもう少し派手に主張しても良かったように感じた。
そう物足りなさを感じる箇所もあるのだが、昔ながらのシューティングゲームとしての完成度は高く、難易度の程好さもあってシューティングゲームが苦手なプレイヤーから初心者にもお薦めできる良作になっている。
キャラバン時代の古き良き魅力と熱さが詰まっているので、その頃のシューティングゲームに慣れ親しんだ人もノスタルジーを喚起させられること請け合い。アッサリしているが、侮り難い遊び応えを持つ良作に仕上がっているので、興味のある方はぜひ、チャレンジしてみて欲しい。
[基本情報]
タイトル: 『Image Striker(イメージストライカー)』
制作者: てらりん
クリア時間:20分~1時間
対応OS: PC(Windows、Mac)、iOS、Android
価格: 無料
ダウンロードはこちらから
PC
https://terarin.itch.io/image-striker
iOS