フリーホラーゲームが多数公開されていく昨今、システムやギミック面での練り込み度合いの高い作品も増えてきた。先日もぐらゲームスで紹介した『アイシャの子守唄』も、暗闇の中でライトを使用した「振り返り」のギミックが特徴的な作品だった。
振り返るのが恐い短編フリーホラゲ『アイシャの子守歌』。劇中で間接的に”語られる”悲劇とは?
今回は、そんな成熟を見せていくフリーホラーゲームの中で、「ホラー」と「ローグライク」という2つのジャンルを掛け合わせた異色の新作『RxHpsychosis』を紹介したい。
本作は、バグったゲーム世界を探索するシステムが話題となった『バグのセカイ』を制作した、れんたか氏の新作となっている。2つのジャンルを組み合わせたゲームといえば、ローグライクとリズムゲームを組み合わせた『Crypt of the Necrodancer』が挙げられるが、本作が組み合わせたのは、プレイヤーの感情的な部分に訴えかける「ホラー」、そしてプレイヤーに合理的な行動選択を要求する「ローグライク」だ。これら一見相反する2つの要素を組み合わせた本作の魅力とは、何なのか?さっそく、紹介していきたい。
恐怖の存在がうごめく、悪夢のような世界から脱出せよ
本作の主人公である青年「明有」は、あるとき外出をしていたところ、奇抜な服装をした謎の女の子「くれは」を見かける。明有はくれはの存在を夢の中で何度も見ており、気になった彼女に導かれるように追いかけていく。そこでくれはと話した明有は気を失ってしまい、気が付くと、異形の存在がうごめく、謎の世界に迷い込んでしまっていた……。
主人公の明有(画面左)に対して、意味深な言葉を投げかけるくれは(画面右)
気が付くと自宅がおかしな空間になっており、謎の存在も現れる……。
本作の特徴は、先述したように「ホラー」と「ローグライク」の組み合わせにあると言えるだろう。主人公である明有は、探索中に拾うアイテムを駆使しながら恐怖の存在を退け、世界の出口を求めさまようことになる。
ゲームの進め方としては、一般的なローグライクのように階層ごとに区切られたフロアを探索し、次の階層へ進むことが出来る「カンテラ」を見つけ、奥へ奥へと進んでいくものとなる。探索をしていくうちに、敵として謎の存在も現れるので、注意して進む必要がある。
一方で、行動形式についてはローグライクゲームに良く見る形式であるターン制ではなく、リアルタイムで進行する。敵に接触されるとダメージを受けてしまうため、状況に応じて手早く行動するアクション要素も入ってくる。とはいえ、ゲーム開始時に難易度を5つから選ぶことが出来るため、低めの難易度を選べばアクション要素の苦手な人でもクリアできるようになっている。
謎の存在たちがうろつくフロアを探索していく。画面右端で光っているのが、次のフロアへ進むためのカンテラだ
このゲームでまず重要となってくる要素は、プレイヤーの見ることが出来る「視界」だ。フロアはほの暗く、はっきりと見ることが出来る視界は、明有の周囲のみとなっている。
さらに、フロア内の広い場所から細い通路に入ると、視界は一層狭いものに制限されてしまう。これが絶妙な怖さをプレイヤーに与えてくる。まさに一寸先は闇で、すぐ先に敵がいても気づくことが出来ないのだ。そこでは「いつのまにか敵に接触してしまいダメージを受ける」という単純なシステム上の意味だけでなく「制限された視界の中、突如として謎の存在が襲ってくる」ということによってプレイヤーに与える恐怖感が、巧みに演出できているものとなっている。
狭い通路に入ると、視界が途端に狭くなる。この状態では敵に接近されるまで気付けないことが多く、非常に危険だ
またゲーム内で扱うパラメータのひとつである「電力」は、時間の経過とともに減っていき、減るごとに周囲を照らすライトが弱まり、視界はさらに暗くなっていく……。敵の存在が見えにくくなる実際的な効果と、視界が制限されることによる感情的な恐怖が増していくのだ。
電力が少なくなると、周囲が真っ暗に……この状態を続けるのは避けたいところだ
拾ったアイテムを利用して、恐怖の存在から逃げ切れ!
探索中に現れる敵の存在に対しては、アイテムを使用して有利に立ち回ることも出来る。アイテムはフロアに落ちており、メインとなるものは4種類。ほの暗いフロアを一時的に明るくして視界を良くし、敵の発見などをしやすくする「懐中電灯」、飲むとフロアのどこかに瞬時にワープする、敵に襲われた時の緊急避難用の「謎の薬」、使用すると見えないものが見やすくなったり、他にも特殊な効果を発揮する「目薬」、そして電力を少し消費するが、敵を直接的に撃退するための唯一の武器である「スタンガン」となっている。
このほかにも、電力を回復するためのアイテムや、またフロアに存在する鍵を拾って宝箱をあけると、特殊なアイテムが手に入るようになっている。さまざまな効果のものが存在するので、プレイして色々と試してみてほしい。
懐中電灯を使えば、狭い通路でも視界を確保できる。敵の奇襲を防ぐことが出来るので安心だ
ゲーム内では出会った敵の情報を知ることが出来るので、弱点などの参考にしたいところだ
ゲームクリアまで一通り遊んだ筆者のプレイ感として、アイテムの所持数は限られているのに、恐ろしい敵を前にしてスタンガンを正確に当てることが出来ず無駄使いしたり、また暗い通路を進んでいく中で「いきなり怖い敵に襲われたくない!」という恐怖感から、懐中電灯を必要以上に置きながら進んでしまうことがあった。
敵にとつぜん襲い掛かられると、恐怖感から必要以上にアイテムを使ってしまうことも……
これらは一例だが、本作では「頭では分かっているが、恐怖という感情によって必ずしも合理的に行動できない」という状況が発生する。これが、ホラーとローグライクの組み合わせという異色のジャンルの体験なのだ。
曖昧な世界で出会う二人の織り成す物語
本作はゲームシステム面もさることながら、世界観にマッチしたキャラクターデザインなども見事なものとなっている。敵のグラフィックや、明有やくれはのイベントイラストなども、作品世界の空気に合致するように、とても丁寧に作られている。
物語としては明有とくれはの二人が、ここがどこかもわからない世界で探索を行なうため、当初は謎が多いかもしれない。しかし、ゲームを進めていくにつれて段々と分かるようになってくる。ここからはそんな本作の物語を少し紹介してみたい。
探索中には癒し系(?)のキャラも。恐怖の世界で一息つくことが出来る
今回紹介したホラー×ローグライクという新機軸の作品『RxHpsychosis』。難しい難易度でなければ、3~4時間ほどでクリアできるものとなっている。異形の存在がひしめく恐怖のローグライクゲームの踏破に、ぜひとも挑戦してほしい。
[基本情報]
タイトル『RxHpsychosis』
制作者 れんたか
クリア時間 3時間~難易度による
対応OS Windows XP/Vista/7
価格 無料
ダウンロードはこちらから
http://www.freem.ne.jp/win/game/10303