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マジモンにシビれるセリフを読みたければ、フリーゲーム「ハルスベリヤ叙事詩2」をやるしかない!

たまには自分もカッコいいセリフ吐いてみたいぜと思うのは人間のサガというものでしょう。ところが、カッコいいセリフというものは、言葉であるにも関わらず音と非常に相性が悪い。

例えば緊迫した場面があったとして、あなたがこう叫んだとしましょう。

「その口を閉じろ!!人の言葉を話すな、穢土を纏うケダモノめ!!」

すると相手は驚いた顔でこう返すことでしょう。

「え、江戸???」

日本語には同音異義語が多すぎるんだよ! いきなりエドとか言われても、そりゃあ自分の知ってる単語に置き換えるのが精一杯ですよ。緊迫感も台無し。
カッコいいセリフって大体文語調の難しい単語であることが多いですけど、それって実際口に出したらだいたい伝わらないんですよね。実用に耐えない言葉だとしたら、一体何のために生まれてきたんだ、カッコいいセリフ…。

しかし、文字であればそうではない。エドは穢土だとひと目でわかるし、音から生まれる誤解からは一切免れられる。100回生まれ変わっても一度も吐きそうもない文語調のセリフも吐き放題、円滑なコミュニケーションも取り放題!「えっ、今なんて?」と聞き返されることからはもうおさらばだ。

かくして我々はカッコいいセリフを探して、文字で書かれた物語の海を泳ぐことになるのです。

 

最近『ハルスベリヤ叙事詩2』(以下「ハルスベ」)やってるんですけど、ゲームとしての面白さもさることながら、このゲームの良さはシビれるテキストが溢れるように置いてある点。シミュレーションゲームなのに文章量のボリュームも膨大で、一つ一つのテキストの品質も高い。

まるで北海道に行ったときに出てくるイクラとかウニみたいに「こんなにいただいていいのか?」という贅沢。メッチャカッコイイセリフ大好きマンには絶対にオススメしたい名作。オスマントルコのメフメト2世っぽいヒゲ野郎とかがいたりするなど、ファミ通的な表現をすると世界史好きなら思わずニヤリとしてしまうという小ネタ満載なのも最の高でしょう。

はじめから説明すると、ハルスベは、フリーのRTSシミュレーションである「ヴァーレントゥーガ」の拡張シナリオで、ヴァーレン同様にフリーゲームです。ヴァーレン本体がなくとも、ハルスベをダウンロードすると必要なものは入っていますので、ハルスベだけをダウンロードすれば遊べちゃいます。

ダウンロードはこちらから可能。『ハルスベリヤ叙事詩2』の方をダウンロードしましょう。

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最初に選択する国家で悩むのはシミュレーションゲームあるあるですが、初めて遊ぶなら【本編】のルーリアン大公国がオススメ。周辺に中立国が多くて領土を広げやすいのと、騎兵が強いので運用方法を学ぶのにバッチリ。長距離に強い兵科がいればベストなんですが、ハルスベには一つの勢力で近距離・長距離・騎兵が強いのがバランス良く揃っているところなんてないので我慢しましょう。

難易度はEasyで。シミュレーションゲームに慣れている人でもEasyが良いです。余裕でクリアできるならそこで初めてNormal以上を遊びましょう。ゲームバランスとしてはわりと難しい方に入ると思うので、途中までイベントを進めたのに詰んで最初からやり直すというのはもったいないことになるので。

世界設定が練られているというのは、反面固有名詞が多くとっつきづらいという欠点でもあります。わけのわからん単語が多く、読んでてしんどいかもしれませんが、最初のうちはすべてを理解しようとする必要はないです。なんとなくボーッと見とけばそのうちカッコいいセリフが出てくるとのめり込めるはず。あとは好きになったら理解するのは速い。何でもそうですが、好きになる前に理解しようとする必要はない。

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シミュレーションの戦略画面はそうそう難しくないのですが、戦闘はRTSなのでヴァーレントゥーガやったことない人にはとっつきづらいです。情報量が多いんだよね。

なので、端的に言うと覚えることは2つ。

1.戦闘が始まったらスペースキーを押して時間を止める。
2.前線に槍兵等の近距離兵。後方に砲兵や弓兵。脇に騎兵の陣で望む。

1.については、ハルスベはRTSなので、ボーッとしていると戦闘が進んで皆殺しにされてしまいますが、スペースキーを押すことで時間を止めることができます。これに気が付かないと軽く死ねます。停止時間中もユニットの移動先が指示できるので、基本的には時間停止をちょくちょく使っていくイメージで戦いましょう。

2.については、有効な兵科を当てるための基本的な陣形の組み方となります。ハルスベは兵科間の相性差が非常に大きく、弓兵などが騎兵突撃を受けると、火にくべたフライパンに乗せたバターのように一瞬で溶けます。また、騎兵は全体選択などで選ぶと前線兵扱いになり、放っておくと真っ先に突撃してしまいます。すると、敵の前線の槍兵に串刺しになり、やはり一瞬で溶けます。
なので、最前線には歩兵を持っていき、歩兵が押し合いしている後ろから弓や砲を打たせて、前線を膠着させましょう。すると、相手も前線に近距離兵種、後方に長距離兵種となりがちなので、騎馬を個別に迂回突撃して敵の後方を踏み潰しましょう。射撃の支援を失った敵の前線は自然と決壊しますので、あとは押しつぶしましょう。
これが基本パターンなので、とりあえずはこれだけ覚えりゃOKです。騎兵突撃が決まったときの感触はンギモッヂイイという声が胃の中から出てくる。ちなみにマウスの範囲選択で、1ユニットが含まれる範囲を選ぶと、そのユニットが所属するグループ全部が選択されるので便利だぞ。

【本編】には23勢力ありますが、すべての勢力で豊富なイベントと個別のエンディングがあり、これ以外に後期シナリオとも言える戦役もあることを考えると、テキスト量がヤバい。もはやシミュレーション遊んでるのかアドベンチャー遊んでるのかわからんレベル。

本編以外からも出していますが、好きなセリフやイベントを抜粋したのでいくつかご紹介したい。空気が合うと思えば、ぜひ遊んでみてください。

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大陸最大の宗教であるラベリヤ教の総主教争いは、壮絶な争いを極めた末に政治闘争で亡くなった枢機卿の娘であるメディオラを傀儡として総主教に立てることを着地点として収まった。枢機卿ヨーハンクラッツらが後見人として実権を握るが、旗色が悪くなると他勢力と講和を結び、ラベリヤ教の権力を維持しようとする。その際、ヨーハンクラッツは「総主教メディオラはどうなるのか?」と尋ねられ「……最善を尽くす」と回答した後の流れ。みんなも傀儡として持ち上げた人物が用済みとなって切られそうになったら、たった一人でも味方してあげような。

ラベリヤ神聖同盟の覚醒イベントで、この後「神聖カルト・ハダシュト」と国名を変えてメディオラとアルケーが実権を握る、後々のシナリオに影響のある事件。ただ、こうまでしても最後は幸せになれないのがハルスベあるある。

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ハルスベ人気No.1の名言製造機ステビア総長。白砂糖騎士団は、正式名称を”砂糖の道を守る為のバーテル独立騎士修道会カラクル軍団及び騎士団連合領”と言い、独立勢力として交易路を守る組織なのだけど、総長がめっちゃ異教徒ブッ殺すガール。ちょっと何かあると「カラクル(征伐)ッ!!」と叫んですぐ切り込んでくる。異教徒だと殺されるし、異教徒を殺さないものも殺されるし、ましてや神を信じないアナーキストなど論外。こんなに「死ね」「死ね」言いまくる人は又吉イエス以来だ。

白砂糖騎士団を選択すると、異教徒どころか同じ神を信じる者とも全然上手くやっていけないので初期配置から周りは敵だらけなのだけど、頑張って攻略して、ラベリヤ神聖同盟との戦闘までたどり着くと、枢機卿ヨーハンクラッツにすら「カラクルのステビア!?どうしてお前は死んでいないッ!大陸西部でお前のような分別のない者が生き延びられるはずがない!」と煽られる始末。どれだけ敵が多いんだ。

そんなステビア総長ですが、本編の終盤以降や、カラクル包囲戦を描いた戦史モード『そしてハビラの砂になれ』では、単純な狂信者ではなく、それなりに考えて行動していたことがわかります。「騎士団が異教徒に勝ち続ける事実は、民にとって神の実在を示す恩寵である」という自己認識の元に動いてたっぽく、わりと社会派だったりする一面もある。

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高度蒸気機関帝政連邦は、北部のルーリアン大公国、南部の総主教庁軍の両軍に打ち破られ、ルーリアン大公国への降伏を選択。高度蒸気機関帝政連邦の複雑化した組織を維持するため、皇帝ルコニアは副帝として残された。ルコニアは戦争の敗北を効率性ではなく、制度構造の問題であったとして総括。その後は、蒸気機関を吸収してルーリアン大公国から名前を変えたカレリア帝国の尖兵として総主教庁軍と対することになる。

旧蒸気機関の首脳陣は、この戦いを自分たちを世界に理解してもらうための見本市の場のようなものだと定義。総主教庁軍と対するため派遣された蒸気機関顧問アハルエドジェは新兵器”キメラメルカバーⅡ”を戦車6台に牽引させ、戦場へ持ち込んだ。”キメラメルカバーⅡ”の砲撃は敵の大群を一瞬で蒸発させたが、その際にアハルエドジェが言い放ったセリフが上記。記録員のスフェイス卿からは「蒸気機関が傾いたの、お前に責任の一端があるのではないか……?」と突っ込まれる始末。

アハルエドジェさんは、研究のためならわりと善悪なくルビコン河をサラッと渡ってしまうタイプ。後日も「私は作りたいから作ったのであって、その後の使い方は考慮しない。そりゃあ、出来上がったものに対して人それぞれの意図や思惑は絡むだろうよ」と平気で言い放つなど、わりとやりたい放題の科学者の鑑。予算の私的流用とか言われて一旦牢まで入れられているのもアツい。あえて低いカタログスペックを少ない予算で出しておいて、上も引っ込みがつかなくなったところで追加予算を要求するテクニック、我々も真似していくしかない。

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閻証聖は、中国をモデルとした国家と思われるアルシカ党にて内閣大学士(皇帝の事務の一部を行う官職)を務める文官。上記は、縁戚が皇帝の暗殺を企んで失敗したことが知らされた際、使者に「お前の子を推挙してやるから、死ね」と命じた場面。使者は、閻証聖に逆らっても結局命がなく、自らの天命が尽きていることを悟って自刃するが、自分が命じたわりに「家族を大切にするやつは信用できない」とボロカスに言ってる証聖ちゃんかわいい。

立ち位置的に武官との仲が悪く、性格も優秀さ故の傲慢なところもあり石田三成的なタイプで、個人的にハルスベで一番好きなキャラ。サラリーマンやってると、この手の人間が汗をかいて組織を回していることがわかってくるので、組織人的にはわりとシンパシーを感じてしまう。戦場でも官僚らしく持って回った言い回しを使うが、民兵が「なぁ、大臣様は何を言っているんだ?」と言っているのに気づくと、「功をなせ!!ぶっ殺せッ!」と開き直る場面もありかわいい。

姉の閻天授は、巨大数の扱いに秀でてフワフワした性格の数学的変人だが、なにかと常に「証聖ちゃん、証聖ちゃん」と妹に依存しているように見える。ところが、クールな閻証聖も戦局が不利になってピンチに陥ると「助けて姉さん!」と叫び、本当は証聖の方も姉に依存している節がある。

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コスタ皇帝ミシェル・ブーランジェは、時勢に乗って将校から皇帝まで上り詰めた人民の英雄。内戦をコスタ主導で終わらせるべく聖都へ遠征するが、そこで総主教の遺体が収まった棺を目撃する。既に総主教庁の軍は首のない死体として動き回っていただけだった。ラベリヤ教と関係性を築き、内戦の主導的立場を築こうとする目論見は外れ、遠征の目的は失われた。そこに南下してきたカレリア皇帝軍と戦闘になるが、戦う意味はもはやない。

戦史モード『二帝明暗』は、途中でコスタ(フランス)側に増援が来ることや、終盤にコスタが中央突撃をしてくることからアウステルリッツの戦いがモチーフと思われる戦い。ここでは、カレリアの専制君主ジャッキとコスタ皇帝ミシェルのやりとりに良さみがあるんすよ。

共和制の強国コスタは、古い議会制を抱えて集権も変革もないまま領土だけが拡大し、その結果で吸収した人々は思想の統合もなく様々な主義主張を持ち、国内で好き勝手に振る舞うが、大衆の人気者である英雄ミシェルが勝利するという一点についてのみ国がまとまることができる。コスタ後半のシナリオは、人々の期待に答え続けなければならないポピュリスト権力者の悩みを上手く描けてるんよね。
「一切の政的問題を国外に輸出し、勝利を輸入し続けなければならない」ってセリフカッコ良すぎるので、将来国家指導者になったら絶対使っていこうな。

一方、強力な専制君主制を敷くカレリア帝国ではそんな問題は起きない。むしろ軍隊は人々のためのツールというよりも国家そのものという概念に近いと言う。ルーリアン公国(カレリア帝国の旧名)シナリオやると、ルーリアン自体が戦争やるための国家みたいなものなので、その考え方になってしまうジャッキの気持ちもわかる。ハルスベ、結構キャラクターの考え方は一貫してるんよね。
体制に担保された権力と、人気に担保された権力の強みと弱みという話は現代でもちょくちょく見るような話です。

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ラベリヤ教国が力を失い、傭兵が聖都に闖入する中、ラベリヤ総主教メディオラは信徒の信仰を守るために自らの撤退を拒絶。その生死は棺の中に伏された。閉じられた棺を誰にも開けさせないため、アルケーは聖都を守る。

戦史モード最高難易度『空飛ぶハンニバル』はハルスベの行き着くところまで行った人だけがクリアできる最後の戦いとも言える戦闘。この戦いに勝利できるならば、アレクサンドロス大王やピュロスにだって勝てるかもしれない。

ローマ人っぽい口上を述べる大公マローラの軍は、中央に歩兵、両翼に騎兵を並べ、対するアルケーは中央に戦象、両翼に騎兵を備えた陣で迎え撃つ。布陣は完全にスキピオとハンニバルによるザマの戦いそのものですが、聖都の前に布陣するアルケー(カルタゴ)側の兵はあまりにも少ない。特にマシニッサのヌミディア騎兵がモチーフと思われる右翼のロマの騎兵が泣けるほどしんどい。突入してきただけで全滅するレベルでつらい。
がんばれアルケーちゃん!負けるなアルケーちゃん!弱者が語る言葉はない……勝つしかない!

セリフだけでなくBGMとのシンクロが震えるほど良いので、クリアできずとも開幕演出だけでもぜひ見てみてほしい一戦。

 

ほかにも個別にいくつか。

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今回の本題がそちらだったのでテキスト面にばかり触れてしまいましたが、シミュレーションとしてもバランスが綿密に練られており最の高であります。特にNormal以上だと、戦争は勝つだけでなく兵を失わないように勝つ必要がありますし、多面作戦は資金が持たないので外交にも気を使っていく必要があります。その上にシビれるテキストが乗ってくるのだから、ゲームとしての完成度はいかばかりか。

最近ゲーム音楽のコンサートに気楽に行けるのは日本に生まれた特権だなと思ったことがあったのですが、日本語で書かれたハルスベが遊べるというのもまた日本に生まれて良かったことの一つだなと思うようになりました。こんな素晴らしいゲームを作ってくれてありがとう。

上の方にもアップローダーへのリンク貼った気がするけど、かなり上なのでもう一回置いときます。興味があればぜひ。

八潮路結社ものおき | uploader.jp

※本記事は当たり判定ゼロの記事を許諾を得て転載したものです。


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