Quantcast
Channel: フリーゲーム –もぐらゲームス
Viewing all articles
Browse latest Browse all 742

静岡県浜松市在住のドラゴンとその幼馴染がお送りする、思考型”左右対称”パズル『Dragon’s Crystal』

$
0
0

静岡県は浜松市。
魔界出身のドラゴン「ヒョウガ」は特技のジャグリングを活かし、市内でパフォーマンスショーを繰り広げていた。本日も幼馴染の東洋竜「マグマ」にアシスタントを依頼し、浜松市のショッピングモールでさわやかにショーを終えたところ。

その帰り道。
彼らは「キサラギ駅」なる場所へと降り立ってしまう。
そして間もなく雨が降り始め、近くにあった館へと避難するのだが……?

物申したい事柄山盛りのオープニングと共に始まる『Dragon’s Crystal(ドラゴンズクリスタル)』は、『RPGツクールMV』製の思考型パズルゲーム。2020年5月28日より「RPGアツマール」で、無料のブラウザゲームとして公開されている。

胡散臭い扉の先にある「部屋(Room)」で水晶体を回収です。

ゲームの目的は至極単純だ。ズバリ館からの脱出。

前述のオープニングの続きになるが、ホラー作品の定番に則り、ヒョウガとマグマの2匹は中に閉じ込められてしまう。さすが「キサラギ駅」と呼ばれる場所。ロクでもないことしか起きない。そんな窮地からの脱出を2匹は目指していくのだ。

余談だが「キサラギ駅」はソーシャルVRアプリ『VRChat』上にて、「the station -VRきさらぎ駅-」なるものが存在したりもする。Oculus Questを始め、何らかのVRヘッドセットをお持ちの方は足を運んでみてはいかがだろうか。

そんな寄り道が過ぎるMoguLiveネタをねじ込みつつ、本題へと戻る。
念のためだが、本作はホラーゲームではない。そこのところお間違えなく。

……って、あれ?
そもそも本題とはなんだったか……って、ああそうだった。
肝心の脱出方法である。
館内を探索し、出口を見つけてください。以上。

ザックリすぎるわ、そんなの状況からして分かるわと言われても、それ以外にどうしろと言うのです。とにもかくにも、もっと掘り下げると館内は複数のフロアで構成されており、その至る所に胡散臭すぎる「扉」がある。扉を開けると……

奇妙な水晶体が複数置かれた「部屋」、英語で書いて「Room」へと入れる。
ここに置かれた水晶体を全部回収しきるとクリアになり、扉近くのランプが点灯。

複数の部屋でランプを点灯させれば(クリアすれば)、フロア内にある大扉を開けられるようになり、次のフロアへ移動できるようになるのだ。そしてまた、フロア内の胡散臭い扉の先で水晶体を全回収しては、ランプを点灯させ、大扉を開けるのを繰り返す。こんな具合に進めつつ、出口を目指す形となる。

もの凄く簡単そうに見えるが、ところがどっこい。CrystalのRecoveryをするRoomには、SurprisingなDisabilityが用意されている。何のこっちゃだが、要は「水晶体をお茶の子さいさいに回収できる甘いゲームと思うたら大間違いやで。」ということである。

どういうことかと言えば、ヒョウガとマグマの2匹を同時に動かして回収しなければならないのだ。とは言え、2匹別々に切り替えながら動かす訳ではない。基本、ヒョウガが上下に移動すれば、マグマもそれに追随する仕組みになっている。

だが、それは上下に限ってのこと。左右の場合、ヒョウガが右に動けば、マグマは左に動いてしまう。本記事見出しで既にバラしているが、左右対称の法則に基づいて動くのだ。このような特殊な制約が課せられた中で、水晶体を回収していかなければならない。一歩ずつ、慎重かつ着実な行動が試されるのだ。

もちろん、雑に動けば奈落の底行き(ミス)である。幸い、何度落下した所でゲームオーバーにはならず、最初(一手目)からやり直しになるだけである。しかし、直感の赴くがまま動けば同じ結果の繰り返しである。無限ループとも言う。

そんな紛うことなき思考型のパズルゲームと称せる攻略が試される設計で、一筋縄ではいかぬ内容になっている。静岡県浜松市在住のドラゴン2匹の脱出劇という珍妙奇天烈な設定とは裏腹の、本格派の作りをしているのだ。

至れり尽くせりなパズルと絶妙な”山”が脳天直撃!

もちろん、作品全体の魅力も明瞭。
練りに練られたパズルステージこと、部屋の数々である。

特に秀逸なのがバリエーションの豊かさだ。左右対称を主軸にしつつ、そこから派生したアイディアや罠を多分に盛り込み、至れり尽くせりなパズルを作り出している。しかも、進めるたび新たなネタが飛び出してくる。それもあって、全くもって退屈することがない。

さらに素晴らしいのが新たなネタを出した後、それを用いたパズルに少しプレイヤーを慣れさせる構成を取っていることだ。これにより、応用が試される部屋でも、事前の部屋の攻略を通して仕組みを理解しているのもあり、抵抗なく挑戦していける。当然ながら、応用が求められるなりに難易度は高めで、結構な数の試行錯誤が試されるのだが、どう解けばいいか、どんな仕組みかは既に頭の中に叩き込まれているので、理不尽を感じることもなく、楽しく攻略に集中できる。まさにプレイヤーの現時点での理解具合いを丁寧にくみ取り、反映した構成にまとめられているのだ。

これを序盤から終盤まで貫き通しているのも凄い。おかげで最初の方はサクサク、ある程度慣れてきたタイミングで試行錯誤によって時間を要されるという、難易度の起伏が綺麗に表現されている。中盤に差し掛かると、その傾向も少しずつ変わり、後半は腰を据えての勝負になってくるが、それでもプレイヤーを意識した姿勢は変わることなく、左右対称の基本システムから派生したアイディアと可能性の深さで唸らせてくる。

思考型パズルゲームは、その名の通りに頭で考え、解法を導き出すのを醍醐味としている。だが、裏を返せば相応にプレイヤー側に負担がかかる。なので、高難易度のステージを攻略した後、また高難易度のステージを出す流れでは、続けて攻略しようという気持ちも失せやすい。大変なパズルを攻略した後というのは、それ以上に休憩を優先したくなってしまうものだ。相当の頭脳派且つ、手練れの場合は違うかもしれないが。

本作はそんな思考型パズルゲーム特有の重さを連続して感じさせないよう、神経を配って全体を構成しているので、攻略するのが辛く感じてしまう場面があまりない。何より、この左右対称を題材にしたパズルを楽しんで欲しい、応用性の高さに唸ってほしいという思いが率先されていて、楽しさの方が勝る内容にまとめられているのだ。

プレイ中はあまり意識することがないかもしれないが、流れを振り返ってみると、いかに絶妙な構成になっているかが分かる。この種のパズルゲームが好きな人ほど、考え抜かれた仕上がりには唸ること間違いなし。練りに練られたというのは決して誇張ではない凄味が詰まっているのだ。

しかも実は本作、全部の部屋を攻略する必要はない。エンディングを目指すだけなら、苦手な部屋は無視できるのだ。とは言え、序盤は基本、全部の部屋の攻略が必須になるが。ただ、中盤からはその辺の縛りもなくなり、比較的自由に進めていける。パズルもいいけど、ストーリーの顛末が気になるというプレイヤーには嬉しい仕様と言えるだろう。だが、よりよいエンディングを目指すなら、全部屋の攻略は必須になるのだが。ちなみに数は100近い。一筋縄ではいかないのはお察しの通りだ。

そんな厳しさはあれど、全体のまとまり具合は芸術的とすら言え、思考型パズルゲームかくあるべしな構成になっている。アイディア面でも「そういうのがあったか!」と唸るものが揃っているのみならず、「それはパズルゲームなのか?」と苦笑いするものもあったりして楽しませてくれる。

左右対称にキャラクターが動く、そのネタ自体は真新しいとは言えないものだが、ここから連想されるものを限界まで抽出し、盛り込んでいるのは圧巻。アクションゲーム的な反射神経も試されないので、純粋にパズルを楽しみたいプレイヤーの欲求に応えてくれるのも秀逸だ。

長々と綴ったが、要はパズルゲーム好きには辛抱たまらない内容ということだ。そして、100近い部屋を絶妙な起伏を描くようにまとめた構成が異彩を放つ仕上がりになっている。これらだけでも、本作が傑作であることを証明しているほどのインパクトに満ちているのだ。ストーリーと設定周りは珍妙奇天烈ながらも。静岡県浜松市が舞台でありながらも、だ。

思考型パズルゲームを愛する人に贈る、至福の傑作

そんなストーリーも少ない登場人物による掛け合いに焦点が当てられた、愉快な内容。静岡県は浜松市、実在の土地が舞台だけあって、それにちなんだネタも出てくるので、地元の人や静岡県民なら苦笑い必至である。もちろん、人っ子ひとりもいない館からの脱出というミステリアスな設定を踏まえた展開も。そもそもこの館は何なのか、水晶体が置かれた部屋は何を意味するのか、そして主は存在するのか……それらの謎を解き明かせるかどうかはプレイヤー次第。どういう意味かは本編、館内の探索をくまなく行っていけば分かる。その意外なほど複雑な背景に別の意味で頭を使うことになるだろう。

部屋の総数が意味する通り、ボリュームは完全クリアを目指すだけでも10~15時間は超過する物量。エンディング分岐もあり、その内のひとつであるバッドエンドはいろんな意味で意表を突くものになっているので必見だ。他に部屋とは別のフロアマップにも謎解きがあったり、館という設定を無視した場所が存在するなど、ネタに富んだ作りが大変ユニーク。

それら細かい部分も素敵な傑作に本作は完成されている。セーブが手動方式で、フロアにあるクリスタルを都度調べなければならない点、中盤以降における広いフロアでの部屋探しの煩わしさ、ネタ的には面白いけど微妙に浮いている感もある浜松市ネタなどの難点もあるが、練られたパズルと巧みな構成は絶品。

左右対称のネタで、多彩で遊び応えのあるパズルを100近く作り上げているのもインパクト抜群だ。この手の思考型パズルゲームが好きな人ならぜひ、遊んでみて欲しい。そして、なぜか浜松市に暮らすドラゴン2匹の妙なユルさと可愛らしさも味わってみていただきたい。至福のひと時をお約束する!

[基本情報]
タイトル:『Dragon’s Crystal』
作者:竜半
ロケ地:静岡県浜松市
クリア時間:1~2時間(初回)、10~15時間(完全クリア時)
価格:無料

※プレイはこちらから
https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm14679


Viewing all articles
Browse latest Browse all 742

Trending Articles